東日本大震災で多くの介護施設が津波の被害を受けた岩手、宮城、福島の被災3県で、介護職の有効求人倍率が震災前の2.6~4.2倍に上昇するなど、人材不足が深刻化している。震災後の4年半で状況は急激に悪化。仮設住宅での生活により要介護者が増える一方で、賃金が高い復興関係の職種などに人材が流れていることが要因だ。
少子高齢化で2025年度に38万人とされる全国の介護職不足に先行する形。地域社会の再建に影を落としている。
介護職の有効求人倍率を震災前の10年6月と今年6月で比較すると、岩手は0.64から1.64、宮城は0.6から2.52、福島は0.73から2.69に上昇した。
原発事故の影響で休止していた福島県楢葉町の特別養護老人ホーム「リリー園」は、避難指示が9月5日に解除されたことから、年内に同じ場所での再開を目指す。
約60人いた職員を解雇せずにここまで来たが、別の仕事に就くなどして約20人に減った。「楢葉町には戻らない」と再就職を断る元職員もいた。震災前の半分の40人の入居を目標にしているが、職員が集まらなければ減らさざるを得ない。
永山初弥施設長(66)は「長引く避難生活で要介護度が上がった高齢者もいて介護ニーズは高い。ふるさとで受け入れてあげたい」と訴える。
若者の介護職離れは深刻だ。岩手県では、15年度の介護福祉士を養成する専門学校5校の定員に対する入学者数(充足率)が40%を下回った。10年度は106%だったが、震災後は減少の一途をたどる。県の担当者は「賃金の高い建設業など復興関係に若い人材が流れている」と分析する。
盛岡市の専門学校関係者は「介護職はきつい、汚い、危険の『3K職場』というイメージが強く、親が入学を引き留めるケースがある」と嘆く。〔共同〕