【ベルリン=赤川省吾】ドイツ政府は13日、難民の流入を一時的に制限するため、周辺国との国境検問を同日から導入すると発表した。大勢の難民の移動ルートになっているオーストリアとの交通を重点的に検査する。難民受け入れに積極的だったドイツだが、無制限に難民を引き受けるわけではないとの姿勢を国内外に訴えることで、欧州連合(EU)各国に難民の受け入れに協力するように圧力をかけた格好だ。
14日、オーストリア・ドイツ国境で車を検問するドイツの警察官=ロイター
独政府の決定を受けてドイツ鉄道はオーストリアとのあいだを結ぶすべての国際列車の運転を14日朝まで取りやめる。特急だけでなく通勤・通学の足となる近郊列車も対象となる。独公共放送ARDによると主要道路には警察官が13日夜から検問所を設け、通行車両の点検を始めた。
EU欧州委員会は「現在のドイツの状況を考えればルールに合致するとみられる」との声明を発表し、入国審査の導入に理解を示した。
ドイツ政府は今回の入国審査の導入については「暫定措置」と説明。「ヒト・モノ・カネ」の自由な移動を目指した欧州統合の精神に反したものではないと強調するが、あまりの難民の多さに「移動の自由」が揺らいでいる。
ドイツ南部の中心都市ミュンヘンは12日の1日だけで1万3000人の難民を受け入れた。宿泊施設は満室で支援が追いつかない状況になりつつある。今回の措置は流入ペースを抑えるのが最大の狙いだ。
14日に開かれるEUの臨時内務・法務相理事会でドイツは欧州各国が平等に難民を引き受けるように迫る見通しだ。
ドイツが難民の流入を制限したことで周辺国にも影響が出ている。オーストリア連邦鉄道は引き続きハンガリーとの列車を運休し、切符の販売も取りやめた。チェコは難民が自国領を通ってドイツに向かうのを警戒し、国境地域の警備を強化している。
一方、欧州の主要都市では難民受け入れを訴える大規模なデモが行われた。ロンドンやデンマークの首都コペンハーゲンでも数万人が参加し難民との連携を訴えた。ただ、難民受け入れに消極的な東欧諸国では受け入れに反対するグループによるデモも行われたという。