【ワシントン=川合智之】オバマ米大統領は23日午前(日本時間同日夜)、カトリックの最高指導者に就任後初めて訪米したローマ法王フランシスコとホワイトハウスで会談した。改革派として知られる法王は気候変動問題や貧困撲滅への熱心な取り組みなど、オバマ氏との共通点も多い。法王の影響力を借りて反対派をけん制するオバマ氏の思惑もありそうだ。
オバマ大統領(右)は初訪米したローマ法王フランシスコとホワイトハウスで会談する(22日)=AP
会談に先立って開かれた歓迎式典で、オバマ氏は米キューバ国交回復を仲介した法王に向け「計り知れない支援に感謝する」と表明。さらに欧州に流入するシリア難民を「共感と寛大な心」で歓迎すべきだと訴えた。法王は米国民に「弱者を守る国際社会の努力への支援」を呼びかけ、難民や気候変動問題で米国の指導力に期待を表明した。
法王は6月、地球温暖化が「前例のない生態系の破壊」をもたらすとして「深刻な意味を持つ国際的課題だ」と警告した。また、行き過ぎた資本主義を批判し、貧困の問題を訴えることも多い。
米ハーバード大のジョセフ・ナイ教授は「歴代法王も貧困という言葉は発してきたが、今回の法王はぶれずに貧困の問題に焦点を当てている」と評価する。「信者のほかの人々に対しても影響力は大きい」とみる。
オバマ氏は気候変動を政権の遺産(レガシー)にしたい考えで、年末にパリで開く第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で各国に前向きな参加を促す考えだ。あわせて最低賃金の引き上げや富裕層増税など格差是正に向けた取り組みも進めており、法王と見解が一致する。
米国では人口の半数がプロテスタントだ。しかし、中南米系を中心にカトリックも多く、法王の影響力は大きい。オバマ氏は法王の発言をテコに、共和党が反発する気候変動や貧困対策の政策を実現させる構えだ。
一方、カトリックの保守派には「フランシスコはカトリックのオバマ」との批判もある。中絶や同性愛などについて法王が「神の救いを求める同性愛者を裁く立場にない」などと述べ、寛容な姿勢を見せたことがある。
法王は19日からキューバを訪問。22日に到着したワシントン郊外の空軍基地ではオバマ夫妻とバイデン副大統領夫妻が出迎えた。24日には米議会でローマ法王として初めて演説。25日にはニューヨークの国連本部で演壇に立つ。フィラデルフィアでは200万人規模のミサを予定している。