【フランクフルト=加藤貴行】スイス製薬大手のロシュは12日、欧米の4工場を2021年末までに閉鎖すると発表した。対象は化学合成でつくる低分子医薬品を生産する拠点で、いずれも稼働率が低下していた。ロシュはヒトの免疫機能などを応用したバイオ医薬品が収益の柱に育ち、業界屈指の利益率を誇る。業績が好調なうちのリストラで、バイオ医薬品を柱とした収益構造への転換を加速する。
閉鎖するのはアイルランド、スペイン、イタリア、米国の低分子医薬品の工場。計約1200人の雇用に影響が出る。ロシュはただちに従業員側との協議に入り、工場の売却を含め検討し人員削減の影響を抑える考え。またリストラ関連費用として総額16億スイスフラン(約2千億円)を計上する。
一方、スイスの低分子医薬品の工場には3億スイスフランを投じ、生産方法の見直しも含めた次世代技術を導入する。拠点再編で競争力を高める。
ロシュは直近の2年間、バイオ医薬品の生産能力増強に20億スイスフラン以上を投じてきた。生体反応を生かし副作用の少ない抗がん剤などの研究開発も順調に進む。
業界の主流だった低分子医薬品は成熟化し後発医薬品に市場を侵食されている。近年の大型新薬のほとんどがバイオ医薬品なのが現状だ。バイオ医薬品は疾病分野ごとの少量生産で対応可能で、製薬大手の生産体制が大きく変わる可能性がある。