【ブリュッセル=森本学】欧州連合(EU)は16日、ベルギーのブリュッセルで外相理事会を開いた。パリ同時テロの発生後、初の閣僚会合となった。議長を務めたモゲリーニEU外交安全保障上級代表は同日の協議終了後の記者会見で「難民・移民問題とテロ脅威の問題を混同することがあってはならない」と訴えた。テロ事件を契機に、EU内で難民受け入れ策の見直し論が高まることをけん制した格好だ。
外相理事会の冒頭でフランスがパリ同時テロの状況を報告。外相らは席上、犠牲者を追悼するために黙とうし、仏への連帯を表した。テロとの戦いで中東や北アフリカ、トルコなどと連携強化する方針を再確認した。
理事会では欧州に多数の難民らが押し寄せる難民危機への対応も協議した。パリのテロ実行犯のひとりで襲撃後に自爆したアハマド・モハマド容疑者が、10月に「難民」としてギリシャにボートで到着していたことが判明。EUによるシリア難民らの受け入れ策とテロのリスクを結びつけて批判してきた受け入れ反対派の意見が勢いを増す可能性が高まっている。
会見でモゲリーニ上級代表は、難民問題とテロの脅威の混同は「世論にとって非常に危険だ」と指摘。「(テロと)同じような脅威から逃げてきて、保護を求めている人々を守る義務が我々にはある」とし、パリ同時テロでEUの難民受け入れ策が変更されることはないとの考えを強調した。
ただ実際には、今回の同時テロを受けて、EU加盟国の足並みの乱れは強まりつつある。
EUは9月、今後2年間で計16万人の難民を加盟国が分担して受け入れる方針を決定した。ハンガリーなどの中東欧諸国が軒並み反対する中で、唯一賛成に回ったのがポーランドだった。ところがポーランドでは10月の総選挙で政権交代が実現。難民受け入れに反対する保守政党「法と正義」が主導するシドゥウォ政権が近く発足する。次期欧州担当相のシマンスキ氏はパリのテロで「(受け入れ分担を)実行に移す余地がなくなった」と方針転換を表明した。