乳白色の裸婦像などの作品で知られる画家、藤田嗣治(1886~1968年)が、東京美術学校(現・東京芸術大)在学中に描いた父親の肖像画が見つかった。同大学大学美術館(東京・上野)で開催中の「藤田嗣治『舞踏会の前』修復完成披露展」(6日まで)で展示されている。藤田の学生時代の油絵は珍しいという。
発見されたのは「父の像」で、縦約60センチ、横約45センチの油絵。東京美術学校に在学中の1909年に制作された。軍医の父親、嗣章(つぐあきら)が胸に多くの勲章をつけた制服姿で描かれている。
同作は半年ほど前、所有者から東京芸大に持ち込まれた。修復を担当した東京芸大大学院の木島隆康教授によると「藤田の学生時代の油絵はほとんど見たことがない」という。
藤田はパリに渡った後、同学校で教えていた洋画家の黒田清輝を批判。しかし同作では青色などを混ぜて茶褐色を作っているほか、黒色を使っていないことなどから、当時は黒田の教えを守っていたことがうかがえる。〔共同〕