益城病院の犬飼邦明理事長(右)と、今後の対応について協議するDPATのメンバーら=15日、熊本県益城町、佐藤幸徳撮影
熊本地震で被災した精神科の患者らの支援のため、九州や中国地方から派遣された「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」が15日、被災地に入った。派遣は2014年の広島土砂災害と御嶽山噴火に続き、今回で3回目。今後は、避難所などの被災者の心のケアにもあたるという。
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DPATは東日本大震災を契機に発足。精神科医や看護師ら数人1組で、災害や大事故が起きた際に派遣される。被災者の心のケアにあたったり、被災して機能が低下する精神医療を支援したりするのが目的だ。
精神疾患の患者約200人が入院する益城町の益城病院。建物に亀裂が入り、水道や電気、ガスが使えなくなった。犬飼邦明理事長(64)は、患者約50人はそれぞれの自宅に、約150人は別の病院などに移ってもらうことを決めた。
この転院を支えたのが15日午前に宮崎県などから駆けつけたDPATのチーム。患者に付き添ったり職員の相談にのったりして、夕方までにほとんどの患者の転院を完了させた。犬飼理事長は「病気の種類や症状の重さに応じて組織的に動いてくれ、大いに助かった」と語った。
熊本市にある熊本赤十字病院につくられたDPATの活動拠点でも佐賀県などのチームが転院手続きに奔走。佐賀県DPATの医師高尾碧さん(31)は「精神科は長めの支援が必要。情報共有しながら精神疾患がある人だけでなく、避難で環境が変わる(住民への)影響も見ていきたい」と話す。
厚生労働省によると、DPATは今年2月時点で22自治体にある。
災害直後の混乱が落ち着くと、被災者の心のケアも必要になる。専門家によると、危険から身を守るために過剰に敏感になったり、逆に恐怖を感じないように鈍感になったりすることがある。広島土砂災害で、被災者の心のケアにあたった医師は「心が大きなストレスを受けた時に生じる正常な反応で、誰にでも起こりうる。避難所にいる保健師や、DPATチームに相談してほしい」と話す。こわい体験を思い出したり、体験を思い出させるような刺激を避けたりする人もいるという。
熊本県の災害対策本部の久我弘典・DPAT調整本部長は15日夜、「これまでは既存の患者の転院を支援していたが、今後は避難所にいる被災者が不眠や不安など精神状態の悪化を訴えることが増えるだろう。そうした人をどうフォローしていくかが重要になる」と述べた。