大きな被害をもたらす地震が近くで続発しているなかで、全国で唯一稼働している九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)は運転を続けている。敷地内で観測された揺れが原子炉を緊急停止する設定値を下回っているためだ。
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原発は、原子力規制委員会の審査で了承された基準地震動(想定される揺れの大きさ)に耐えられるよう設計されている。さらに、保安規定で定めた設定値を超える地震の揺れを敷地内で検知すると、緊急停止するようになっている。
規制委によると、川内の基準地震動は620ガル(ガルは揺れの勢いを示す加速度の単位)、緊急停止の設定値は水平方向で260ガルなど。一方、九電が原子炉近くの建屋に設けた地震計で観測した揺れは、14日夜の最初の地震で「数ガル」、マグニチュード7・3を記録した16日午前1時25分ごろの地震でも12・6ガルだった。
規制委は「設定値を下回っても、安全上重要な施設が壊れるなどの問題があれば停止を命じる判断はありうるが、現状はそうではない」としている。
原発そのものが無事でも、大地震で外部からの送電が止まるなどのおそれはある。ただ、新規制基準では、外部からの送電系統を複数にすることや、非常用発電機を何台も設けることを義務づけている。
停止中の九電玄海原発(佐賀県玄海町)や四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)などでも、使用済み燃料を冷やす手段が失われれば重大事故につながるおそれがある。しかし、大きな揺れは観測されず、冷却は保たれているという。(東山正宜)