ブラジルのルセフ大統領
政府会計の粉飾に関わったとして批判されているブラジルのルセフ大統領について、同国の連邦下院議会は17日、弾劾(だんがい)すべきだとする意見を全議員の3分の2以上の賛成で可決した。上院でも賛成意見の可決が有力視されており、ルセフ氏は180日間の職務停止処分に追い込まれる可能性が高い。政権はかつてない窮地に立たされた。
「弾劾はクーデターだ」「大統領は国を危機に陥れた責任がある」。首都ブラジリアの下院では、賛成派と反対派が激しく対立した。17日午後11時過ぎ(日本時間18日午前11時過ぎ)の段階で、全513議席のうち賛成は351、反対が128。怒号が飛び交うなか、法律が定める3分の2以上の可決条件を満たした。
今後、上院の過半数が賛成すれば、ルセフ氏は180日間の職務停止処分となる。地元メディアの調査では、上院は賛成派が過半数に達しており、停職処分に至る可能性が高い。上院の採決は5月初旬の見通し。上院の通過後は上院に弾劾法廷が設置され、3分の2以上が有罪と判断すればルセフ氏は罷免(ひめん)される。
ルセフ氏は不正会計に関与した疑いが持たれており、野党側が弾劾を求めてきた。ルセフ氏は「十分な証拠はなく、弾劾はクーデターだ」と抗議している。
連立与党は当初、弾劾を否決できる勢力を保っていたが、最大議席を持つブラジル民主運動党(PMDB)が3月に連立政権を離脱し、流れが変わった。ルセフ氏が罷免されれば、PMDB所属のテメル副大統領が大統領に昇格する。
ブラジルでは、五輪を担当してきたスポーツ相が政治の駆け引きから交代に追い込まれるなど、政治の混乱が開幕の準備にも影響を与え始めている。今後、ルセフ氏が180日間の停職処分になれば、8月5日の五輪開幕時にはテメル氏が暫定大統領を務めている可能性が高く、開催への影響が懸念されそうだ。
2014年に2期目がスタートしたルセフ政権下では、深刻な不況に加え、大規模な汚職事件が発覚。支持率は10%前後に低迷している。(ブラジリア=田村剛)