小雨が降る中、土砂崩れがあった「ログ山荘火の鳥」で行方不明者を捜索する自衛隊員ら=18日午前8時31分、熊本県南阿蘇村長野、長島一浩撮影
熊本地震は、マグニチュード(M)7・3、最大震度6強を記録して被害を拡大させた16日未明の「本震」発生からまもなく、生存率が著しく低下するとされる「72時間」を迎える。被害の大きかった熊本県阿蘇地区では18日、安否不明者の懸命の捜索が続けられた。ライフラインや交通機関も復旧に手間取っており、多くの県民が不自由な生活を強いられている。
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熊本地震 災害時の生活情報
県によると、地震による死者は42人。16日未明の本震で土砂崩れや家屋の倒壊があった南阿蘇村で、9人の安否が確認されていない。県の18日午前9時現在のまとめでは、2千棟以上の住宅が全壊か半壊状態という。
倒壊した建物などに閉じ込められた被災者の生存率は72時間を超えると著しく下がるとされる。1995年1月の阪神大震災では、倒壊した家屋などの中から見つかった人のうち生存者の割合は、4日目には6%を切った。16日の本震後の「72時間」は19日未明に迫る。自衛隊は18日朝から、南阿蘇村で安否不明の2人がいたとみられるコテージ付近などで、土砂の掘り起こし作業を再開した。
一方、熊本県宇土市は18日午前10時、花園台町地区で土砂崩れのおそれがあるとして市内の72世帯99人に避難指示を出した。県内では18日午前9時現在で約10万5千人が避難した。熊本県と熊本市の災害対策本部によると、県内の公立の小中高校では18日、全体の約7割にあたる389校が休校となった。大分県では18日、公立の小中高校(幼稚園を含む)の計約600校のうち、約6%にあたる36校が休校した。
ライフラインや交通の寸断も続く。熊本県内の水道では18日午前10時現在、約18万戸が断水している。熊本市は17日から一部地域で試験的に水を流しているが、大量の漏水が発生しているという。市は18日中に全域で通水試験をする。
九州電力によると、18日正午現在、阿蘇地域を中心に県内約3万4千戸が停電している。阿蘇地域では復旧作業に入れない場所も多く、完全復旧の時期は見通せないという。西部ガスは、県内約10万5千戸で都市ガスの供給を停止したままで、病院の8施設のみ供給を再開している。
JR九州は18日、熊本県内の多くの路線で終日運転を見合わせるが、鹿児島線の荒尾―熊本間では18日午後に運転を再開した。全線で不通になっている九州新幹線は18日午後、熊本駅近くで脱線した回送列車の1両目を線路に戻す作業を始める。国土交通省の地震後の調査では、九州新幹線沿線の施設や設備で18日午前までに約100カ所の破損が見つかるなど、復旧の見通しは立っていない。同省によると、新玉名―新八代間の防音壁が約80カ所で落下したり、新八代駅の上下線のホームを支える柱が約20カ所で破損したりしていたという。
空港ビルが損壊した熊本空港は18日も終日閉鎖される。全日空と日本航空は同空港発着の全便の欠航を決め、福岡―鹿児島間の臨時便などで対応する。熊本、大分両県内の高速道路は6区間で通行止めが続く。西鉄は高速バスのうち福岡―鹿児島、福岡―宮崎など11路線が終日運休する。