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日銀前審議委員・白井さゆり氏の一問一答

作者:佚名  来源:asahi.com   更新:2016-4-19 6:35:06  点击:  切换到繁體中文

 

日本銀行が1月末に導入を決めた「マイナス金利政策」は、銀行貸し出しを大きく増やすなどの効果もまだ見えず、評判は芳しくない。日銀審議委員の5年の任期を3月に終え、退任したばかりの白井さゆり・慶応義塾大特別招聘(しょうへい)教授に、新政策に反対した理由や今後の日銀への注文を聞いた。


「追加緩和すべきでない」日銀前審議委員の白井氏に聞く


――国債などを大量に買ってお金を市場に流す大規模な金融緩和を始めて3年が過ぎました。どう評価しますか。


「大規模緩和を始めたのは良かったと思っている。それ以前の金融政策では過度の円高を修正できず、株価も実力より低い状態が続いていた。大規模な金融緩和で円高・株安が是正された。需要を刺激する新しい商品やサービスを提供すれば、価格を上げても消費者がついてくると思い始めた企業も増えた。この3年間、企業収益も好調で企業に体力がつき、賃金も上昇に転じている」


――それなのになぜ、マイナス金利政策の導入には反対されたのですか。


「導入を決めた1月は、物価の基調が悪化していたわけではない。世界経済が下ぶれするリスクも、以前から分かっていたことで、新たな政策を導入すべき新しい理由は特段なかった。マイナス金利政策の仕組みは複雑で、金融機関がこれによって大きな損を被ると誤解をする恐れもあった」


「大規模な金融緩和を持続できるところまで進め、できなくなったらマイナス金利政策を導入するという手順であれば、論理的だった。新政策の導入は、日銀が自らこれまでの金融緩和を続けるのが難しくなっていると認めた、と市場に誤解を与えるおそれもあった」


――結果的にどうだったのでしょうか。


「新政策の導入で、国債の金利は一段と下がった。ただ、マイナスの金利で損をしてまで国債を買うのは、高値で日銀に売ろうとする投機筋だ。本来の取引参加者が少なくなり、国債の取引量も減ってしまった。このため、日銀はさらに高い値段で国債を買わないと、国債の保有残高を増やし続けることが難しくなった。結果的にこれまでの金融緩和の限界を早めてしまったのではないかと思っている」


――金利低下で収益が圧迫される金融機関だけでなく、国民の間でもあまり評判がよくありません。


「人々の心理に与えた悪影響は大きかったと思う。銀行は預金金利をマイナスにしないと言っているが、預金者は、銀行の負担がいつか手数料などで自分たちに返ってくると感じているのではないか。日銀の説明が不十分なのも一因だ」


――日銀は前年比で2%の物価上昇の目標を掲げていますが、なぜ2%なのですか。


「日本の経済をより安定させるためだ。経済成長する国は適度な物価上昇が起きている。物価が上昇しなければ、名目GDP(国内総生産)が伸びにくく、社会保障を維持したり、国の借金を返したりしていくのが大変になる」


「円相場にも影響する。かつて日本は米国に比べてインフレ率が低かったため、過度な円高ドル安が続いた。2%を目指さないと円高に戻るおそれがある。1%の物価目標では、物価上昇率が0%に下がりやすく、デフレに戻ってしまうリスクがある」


――目標は、国民の支持を得ていると思いますか。


「インフレを起こす政策は物価が先に上がりやすいので、(物価上昇の影響を除いた)実質賃金が下がる。(実質賃金が上がりやすい)インフレを抑制する政策よりも難しく、国民の理解を得にくい。物価を2年間で2%上げるというのは難しい目標で、企業と家計が受け入れて動いてくれないと達成できない」


「金融政策は難解なので、日銀は関心のある専門家を中心に情報発信をしてきた。だが、これだけ難しい目標の達成には、国民目線でより分かりやすい説明を増やす広報戦略が必要で、もっと早くから取り組むべきだった」


「広報の重要性を当初からあらゆる場で強く主張してきたが、残念ながら、賛同を得ることがなかなかできなかった。ただ、最近はようやく日銀内でも理解が得られつつあり、今後の改善に期待したい」


――2%の物価目標は達成できるのでしょうか。


「家計が物価上昇を受け入れていないことを考えると、黒田東彦(はるひこ)総裁の残り2年の任期では難しいのではないか。原油価格が急上昇すれば不可能ではないが、それは本来の目標の趣旨とは違う。無理して物価を早く上げようとせず、時間がかかることを率直に認め、持続可能な枠組みに変えていく必要がある」


――2%の旗を降ろす、ということですか。


「2%目標を変えれば、目標を掲げた日銀の信認が失われる。2%の旗は掲げつつ、まず1%を目標にしてはどうか。国民の理解が得られるのなら2%に、と段階的に目指せばいい」


――具体的にどんな手法がいいでしょうか。


「マイナス金利政策で日銀があまりに高値で国債を買えば、赤字回避のために積み上げている積立金の拡大ペースもゆるやかになり、将来、日銀の収支は赤字になりやすくなる。こうした副作用も検証したうえで今後の政策を考えるべきだ」


「仮にマイナス金利のプラス効果をしっかり確認できたら、国債などの買い入れ規模を縮小する。そうすると金利が上昇する恐れがあるが、一方でマイナス金利の幅を拡大することで、金利上昇の影響を抑える手法がいいと思う」


――景気が足踏みし、株価も振るわない状況で、市場には早期の追加緩和への期待があるようです。


「現時点では追加緩和をすべきではない。マイナス金利政策が導入されてから、まだ2カ月程度しか経っていない。少なくとも6~7月くらいまでは、銀行がマイナス金利の環境に慣れて取引を活発化させていくのか、確認する時期だ」(聞き手・津阪直樹、藤田知也)



しらい・さゆり 1963年生まれ。慶大院修了、米コロンビア大博士(国際経済学)。国際通貨基金(IMF)エコノミスト、慶大総合政策学部教授を経て2011年4月から16年3月まで日銀審議委員。



 

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