(19日、ソフトバンク2―1ロッテ)
低めを突いたきわどい143キロの直球を、悠然と見送った。八回1死満塁、押し出し四球を選んで決勝点をもぎ取ったのは、ソフトバンクの柳田だ。開幕から続く連続試合四球も18に伸ばし、王貞治・球団会長が1970年に樹立したプロ野球記録に並んでみせた。
昨季はリーグMVPに輝き、チームを2年連続日本一に導いた立役者になった。今季、相手の内角攻めは厳しさを増すばかり。だが、苦境を成長の糧にするのが柳田の長所だ。開幕直後は「安打の方がうれしい。甘い球を1球で仕留められていない」と自らを責めることもあったが、チームの連勝とともに「大事な場面では、四球もうれしい」と語るようになった。
この夜、球史に名を残す記録達成にも「全然何も思っていません。どんな形でも点が入ればいいと思っていた」と淡々と言った。大切なのは、自分の安打や記録ではない。「誰か一人が打つというより、次の打者につなげていくのがうちのチーム」と語る工藤監督の言葉を、そのまま体現したような勝負どころでの四球だった。
ただ、打率はまだ2割台。王会長が言う。「すごい打者だと思われるほど、相手投手も警戒する。だが、ここを乗り越えていかないといけない」。1ゲーム差で乗り込んだ首位攻防戦の初戦を白星で飾り、チームは今季初の首位浮上。3番打者の真価が問われるのはここからだ。(吉永岳央)