避難所を移るために警察の車を待つ南阿蘇村立野地区の住民=21日午後0時57分、熊本県大津町、竹花徹朗撮影
地震発生から1週間となった熊本県の被災地を、雨がぬらした。被災者の一部は土砂災害の危険から避難先を転々。耐震化を終えたはずの体育館では損傷が見つかり、自治体が避難者を移動させる事態も。疲労の色が濃くなる中、子どもたちの奮闘が雰囲気を和ませている避難所もある。
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熊本地震 災害時の生活情報
「大雨でここも危ないので避難してください」
21日午前9時半ごろ。避難所となっている熊本県南阿蘇村の旧立野小学校で、消防団員らが避難者約130人に伝えて回った。立野地区は16日未明の地震で土砂災害に見舞われ、死者も出た。4年前には豪雨で土砂崩れが発生している。
「この人が最後?」「校舎内に人が残っていないか確認して」。警察官が慌ただしく誘導し、住民は隣町にある大津町総合体育館に向かった。
ところが、体育館に着くと、地元の避難者でいっぱいで座る場所の確保も難しい。「立野地区から来た方は別の体育館に移ってもらいます」。アナウンスが流れた。
大津町によると、体育館で南阿蘇村の住民を受け入れられるか、村から打診を受けたのとほぼ同時に旧立野小の住民が移動を開始。その時点で、体育館はほぼ満員だった。町は急きょ別の体育館を確保した。
「もうここから動きたくない」。そんな声も漏れる中、避難者は改めて移動。午後2時すぎ、数キロ離れた別の体育館に到着すると、毛布を敷いてすぐに横になる人もいた。上村淳子さん(67)は「命が大事と思うばってん、きつかね」と疲れた表情を見せた。
熊本市北区の龍田西小学校はグラウンドがひび割れ、斜面崩落の危険があるとして21日、学校に設置していた避難所が閉鎖された。雨が降りしきる中、約400人が自衛隊のバスに乗り込んだ。
近所の女性(65)は「ようやく落ち着いたのに、移動だなんて」。教室ではしばらく眠れなかったが、日が経つにつれカレーライスが出るなど物資が充実し、21日には水道も復旧した。校舎をみんなで掃除し、感染症対策にも努めていた。「ここまで来たら、笑いが出てくる」
同小は今年4月に開校したばかり。近くの自宅から避難していた石山紀昭さん(75)は「まさかできたばかりの小学校もダメになるとは。次の所は大丈夫なのかな」と心配した。
住民らは約4キロ離れた体育館などに身を移した。前日まで風邪気味で熱があったという宮原千春さん(52)。体育館に到着すると、「ここは寒いから、また体調が悪くならないか不安です」と話した。
約850人が避難している熊本県益城町の町総合体育館では、降り続いた雨の影響で、1階通路の天井から雨漏りが発生。通路が水浸しになった。モップを手に往復していたボランティアの男性は「いくら拭いてもきりがなかけんですね」と話した。
夜になると多くの被災者が詰めかけ、駐車場で車中泊をしている益城町の大型展示場「グランメッセ熊本」では21日午後0時半ごろ、広場に植えられていた高さ約10メートルの木が倒れた。益城町によると、20日夜は約2千人が一夜を過ごしたという。強い風雨が原因とみられ、駐車場に向かって倒れたが、けが人はなかった。(吉田啓、井上充昌、大森浩志郎)