野々村被告は2月の第2回公判後、保釈保証金800万円を納めて保釈された。この日、報道陣約100人が神戸地裁前に集まるなか、公判が始まる約1時間半前の午前9時ごろ、車に乗って中へ入った。
野々村元県議に懲役3年求刑 政活費詐取事件で検察側
「懲役3年が相当」。検察官が法廷で告げると、黒っぽいスーツ姿の被告はいすの背もたれに身を委ねたまま、じっと聴き入った。論告の中で「『記憶にない』と詭弁(きべん)を弄(ろう)した」と公判での態度を非難されると、黙って首を横に振った。最終意見陳述では証言台の前に立ち、やや震える声で用意した文書を読み上げた。「(今後)このような事件を起こさないこと、人にご迷惑をかけないことを誓約します」
昨年8月に在宅起訴された野々村被告。11月の初公判は「精神的に不安定」(弁護人)との理由で急きょ欠席した。地裁は今年1月に初公判をやり直し、強制的に出廷させる異例の「勾引(こういん)」の手続きをとって神戸拘置所に勾留した。
捜査段階で容疑を認めたとされる被告は公判で一転して否認。被告人質問では「記憶にない」「覚えていない」と繰り返し、事件の真相解明は遠のいた。
この日も地裁には傍聴券を求める市民ら523人が列をなした。神戸市の主婦、福吉富子さん(61)は「会見で泣き出したり、公判で『記憶にない』を連発したり、何を考えているのか分からない。私たちが納めた税金の問題。ごまかさず、きちんと説明してほしい」と話した。(川田惇史、釆沢嘉高)