拳銃と実弾を隠し持ったとして奈良県警に逮捕され、銃刀法違反(加重所持)の罪に問われた被告の男が、大阪府警の「泳がせ捜査」に協力していたので無罪だと主張する裁判の判決が9日、奈良地裁葛城支部である。府警は被告を捜査協力者と認めたが、泳がせ捜査は否定。検察側も「あり得ない話」として懲役7年を求刑している。
男は無職の中西知已(ともみ)被告(54)。論告によると2014年5月、大阪市浪速区の当時の自宅に拳銃3丁と、適合する実弾45発を所持していたとされる。奈良県警が家宅捜索で階段下から発見。現行犯逮捕した。
被告は法廷で、流通ルート解明のため、大阪府警の泳がせ捜査に協力していたと主張。「他府県警に捕まれば黙秘し、調書も取らせないと約束していた」と述べ、拳銃と実弾は府警の承認のもと買い手から預かっていたと訴える。公判では被告宅の捜索の際、奈良県警の警官が「大阪府警に助けてもらえ」と同僚が発言したと認め、被告も「首が飛ぶぞ」と言い返した状況が明らかになった。
一体どういうことなのか。被告人質問での供述などによると、中西被告は14年2月、大阪市中央区のホテルでの拳銃取引を仲介し、売人グループが持参した拳銃と実弾を本物と確認し、代金215万円を支払った。その後、近くに止めた車で待っていた買い手に拳銃と実弾を渡した。
4日後、買い手から「預け先が急にリフォーム工事に入った」と頼まれ、拳銃と実弾を預かった。翌日、捜査で協力していた大阪府警捜査4課の警部に保管のことを報告し、その後に「課長の承認が出た」と告げられたと主張する。
府警側は公判で、警部が12年10月に同僚警視の紹介で被告と知り合い、捜査4課が14年4月までに、複数回に分けて計約130万円の捜査協力費を払ったことを認めた。暴力団関連の情報提供への謝礼という。
警部は公判で、被告から連絡を受け、拳銃の取引があったホテルに行った点は認めたが、「実際に取引があるという具体的な情報ではなかった」と反論。翌日以降も取引のことは話題に上らず、拳銃類の保管も知らなかったと泳がせ捜査を否定する。検察側はさらに、被告が一連の拳銃売買を「やりすぎた」と供述するなど、違法性を明確に認識していたと強調する。