難病やがんの診療で広がりつつある患者の遺伝情報(ゲノム)を網羅的に調べる検査について、日本人類遺伝学会は18日、予期しない重い病気に関わる遺伝子変異が見つかった際の対応などをまとめた医療機関向けの提言を発表した。結果を知らせるかどうか検査前に患者に説明して同意を得ることや、十分なカウンセリング体制が必須とした。
患者の遺伝情報を幅広く調べるゲノム検査は、遺伝子の異常で起きる難病や原因不明の病気の診断などで急速に広がっている。約10年前に高速で安価な新技術が登場、ヒトに約2万3千ある全遺伝子を10万円ほどで調べられるようになった。従来は患者の症状から狙いを付けた遺伝子を個別に調べる手法しかなかったが、全遺伝子を最初に調べて病気の原因遺伝子を探れるようになった。
遺伝子の変異が原因のがんでも、特定の変異に効く抗がん剤が相次いで開発され、今後、治療法を選ぶためにゲノム検査が拡大するとみられている。
一方、この検査では発症していない別の病気に関わる変異も見つかる可能性がある。治療、予防できるものもあれば、発症すると治療法がなかったり、発症するか不確実だったりするものもあり、患者に何をどう伝えるか混乱が予想されている。
このため遺伝医学の専門家らでつくる同学会はこの日会見して提言を発表。結果を知らせるかを事前に患者に説明して同意を得ることや、知らせる場合は確認検査の仕方や健康管理の対応策を検討し、専門家による患者のカウンセリングを行い、説明することなどを求めた。同学会理事の高田史男・北里大教授は「ゲノム検査は一般的な医療にも必ず広がる。今から問題点を十分に議論しておくことが重要だ」と話している。(阿部彰芳)