無線式防犯カメラと映像入手の流れ
自治体の防犯カメラが、捜査をスピードアップさせている。大阪府警は、府内17市町と大阪市内4行政区との間で協定を締結。自治体の職員が立ち会えない夜間や休日でも、事件発生時に、無線LANで映像をダウンロードできるようにした。全国でも異例という。
■週末でも映像取得、事後承諾
「特に夜間の初動捜査が大きく変わった」。大阪府警の担当者が語る。府内では昨年、ひったくりで3・6倍、強制わいせつ事件では2・3倍と、いずれも夜間(午後6時~午前6時)の発生が、昼間(午前6時~午後6時)を上回った。
協定により、夜間や休日の緊急時に、「Wi―Fi(ワイファイ)カメラ」と呼ばれる防犯カメラの映像を、事前連絡なしに無線で引き出せるようになった。大阪府によると、府内の自治体が設置するか、補助金を出した防犯カメラは、2016年3月末で1万9944台。うち3千台が協定の対象だ。
カメラに、それ以外では通信できないタブレット型などの専用端末を近づけ、犯行時間帯前後の映像をダウンロードする。どの時間帯の映像を取り出したかは、カメラに記録される。府警は後で、事件の概要や映像の内容などを書類で市区町に提出。市区町はカメラの記録と照合し、不必要な時間帯まで取り出していないかをチェックする。
以前は、府警が自治体のカメラ映像を確認したい場合、前もって役所に「捜査関係事項照会書」を提出。設置場所に担当の職員を呼び、カメラのカバーをかぎで開け、SDカードなど記録媒体を取り出していた。
しかし職員に出てきてもらえるのは平日の日中のみ。金曜の夜に事件が起きると、容疑者が逃走中の無差別殺傷事件など、よほどの重大事件でなければ、映像を見られるのは2日半後の月曜朝だった。
5年ほど前から、各警察署長が市区町長に直談判。協定第1号は13年9月、ひったくりなどの街頭犯罪に悩む東大阪市と結んだ。守口市は16年9月、無線式カメラ1千台を導入した。守口署が事後承認で引き出した映像は50例以上になる。