沖縄県で米軍属の男が女性会社員の遺体を遺棄した疑いで逮捕された事件をめぐり、過去にも繰り返されてきた米軍関係者による犯罪の被害者らも、悲しみともどかしさを募らせている。「なぜ事件はなくならないのか」。怒りの矛先は有効な手立てを打ち出せない日米両政府にも向けられている。
特集:元米兵の女性遺棄事件
「私は2002年、米兵に横須賀でレイプされました。私は殺されなかった。だから、私が声を上げないといけない」。東京・市谷の防衛省前で20日夕、東京在住のオーストラリア人キャサリン・フィッシャーさんが声を張り上げた。
1980年代から日本に住むキャサリンさんは02年4月、交際相手に会うために横須賀を訪れた際、米海軍兵に強姦(ごうかん)された。警察に届けたが、刑事事件としては不起訴に。民事訴訟で04年に勝ったが、その前に米兵は米国に帰国。その後も諦めずに所在を突き止め、13年に米国の裁判所で賠償の履行義務を勝ち取った。自らの経験を踏まえ、性的暴行の被害者支援に取り組む。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しみながらも戦い続けたのは、戦後の沖縄で米軍絡みの性犯罪が続いていることを知ったからという。今回の事件について「私を最後の被害者にしてほしいと思い、人生や家族、財産を犠牲にして活動してきた。本当に悔しい」と話す。
事件が起きるたびに、こう感じてきた。日本政府は「怒っているふり」をし、米政府は「再発防止を約束するふり」をするが、実際の行動に結びついていないのではないか――。
「必要なのは米軍兵士への教育。罪を犯せば決して逃げられないということを徹底して教えるべきだ」と訴える。(其山史晃)
■母は米兵に殺された
高校3年のときだった。沖縄県名護市辺野古の金城武政さん(59)は、白い布をかけられて横たわる母の姿が忘れられない。米軍属の男が逮捕された今回の事件を受け、「悔しくて仕方がない」と話す。