伊賀孝子さん 84歳
大空襲、原爆症、模擬原爆、原発事故。戦争がもたらした惨事や制御が難しい「核エネルギー」と向き合う人たちもまた、オバマ米大統領の広島訪問に注目している。平和を守り、二度と核兵器を使わないと誓う場になってほしい――。その願いは共通している。
オバマ米大統領、広島へ
■大阪大空襲被害者・伊賀孝子さん(84)
「ザーッ」。焼夷弾(しょういだん)は重い雨粒が地面をたたきつけるような音。「ゴーッ」。爆弾が落ちると地響きが起こりました。今も耳にこびりついています。そして1945年3月13日深夜~14日未明の大阪大空襲。13歳だった私の家に焼夷弾が直撃し、母が即死しました。弟は16日に死亡し、私や父も大やけどを負いました。
移り住んだ街の近くでも空襲がありました。暗闇だった街がオレンジの炎に包まれていく。炎の下の地獄絵図を思い、胸がしめつけられました。
オバマさんの広島訪問は歓迎します。でも、米軍が広島と長崎への原爆投下前に日本全土を空襲し、数十万人ともいわれる民間人が犠牲になったことにも目を向けてほしい。落とす側から見れば「原爆」と「焼夷弾」の違いがあっても、地上にいる人にとっては恐ろしい凶器が降ってくることに変わりはありません。
世界各地では、今も多くの市民が戦火に倒れています。「戦争なき世界」こそが私たちの願い。どんなに困難な道でも、その理想を捨てないでほしい。(聞き手・阪本輝昭)
■原爆症認定訴訟の弁護士・岡千尋さん(33)
「おばあちゃんが生きとったらどう思うやろ」。オバマさんが広島に来ると知った時、そう考えました。