家電メーカーの船井電機は23日、林朝則社長(69)が6月28日付で相談役に退き、後任に前田哲宏取締役(61)が就くと発表した。創業者の船井哲良会長(89)は代表権を返上し、取締役相談役になる。
2016年3月期決算で最終的なもうけを示す純損益が過去最大の赤字額となったのを受け、責任を明確化して経営陣の若返りを図る。
売上高の7割を占めるテレビ事業は北米を中心に拡大してきたが、低価格化などで収益が悪化。純損益は11年3月期以降、5度の赤字となった。14年10月には当時の上村義一社長がわずか9カ月で退任し、前任の林氏が社長に復帰したが、経営を立て直せなかった。
船井電機は、船井氏が24歳でミシンの問屋として事業を起こしたのが源流。船井氏は61年に船井電機を設立して社長に就任。90年代以降、米小売り大手ウォルマート向けのテレビ事業で売り上げを伸ばした。08年に会長になった後も、実質的なトップとして経営に深く関わってきた。今回、会長は退くものの、取締役として今後も経営判断にかかわる。退任にあたり、「損失を3年で取り戻し、若い世代の育成に力を入れてほしい」と話しているという。
前田次期社長は、パナソニックに買収された三洋電機出身で、通信事業などを手がけてきた。大阪市内で23日に記者会見し、「新規分野で、50億円売り上げられるプロジェクトを立ち上げたい」と表明。8月までには新たな事業計画を発表する考えを示した。(山村哲史、新宅あゆみ)