フタホシコオロギ=徳島大学
コオロギを量産する技術を確立し、食料難に備えたい――。そんな計画が、ネット上で研究資金を集める徳島大学の学術系クラウドファンディング(CF)として初めて、目標額の50万円を達成した。研究チームを率いる大学院生物資源産業学研究部の三戸太郎准教授(44)=発生生物学=は「これで昆虫食の普及へ踏み出せる」と喜ぶ。
国連の世界人口白書によると、2050年に世界の人口は90億人超と推計され、国連機関は13年、昆虫を食べることで食料不足を補うよう提言した。米国ではコオロギの加工食品も販売されているといい、三戸さんらは研究用に飼っているフタホシコオロギが、高たんぱく質、低カロリーな点に着目した。
フタホシコオロギは背中に二つの斑点があり、沖縄などに生息する。体長約3センチとほかのコオロギより大きく、一年中繁殖が可能という。三戸さんらは、食用に量産するために、自動で水を与えるシステムなどを備え、数千匹を飼育できる装置を計画した。
しかし、昆虫食の研究は国内ではまだ知られておらず、試作器作りの資金調達で行き詰まった。今春、大学が学術系CFを始めることになり、展望が開けた。
「フタホシコオロギ食用化プロジェクト!」と銘打って、4月4日から資金を募った。「イナゴなど伝統的な昆虫食もある日本から、大きな流れを起こしませんか」と呼びかけ、5月末の期限前に目標を達成。募集は続けており、10日時点でサポーター約60人、計約52万円が集まっている。
サポーターへは支援の額に応じた特典を用意している。3千円で、レシピ付きのコオロギの粉末と電子版の研究日誌のセット。5千円なら、このセットにコオロギの顔をあしらったTシャツがつき、1万円では試食会やサイエンスカフェの参加券もつく。
研究チームが4月、コオロギの粉末を使った料理を作って試食したところ「トンカツは香ばしい」「たこ焼きはカツオ節で食べるよりおいしかった」などの意見が出た。丸揚げは「酒のつまみにもいい」という。
三戸さんは「見た目で受け付けない人も多いと思ったが、CFでは予想外の反響があった。食料問題への関心の高さを感じる」と話す。チームは今年秋には飼育器の試作を仕上げる予定。将来は大量飼育器を実用化し、加工食品も開発して市場に流通させる構想だ。(亀岡龍太)
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〈徳島大学術系クラウドファンディング〉 研究資金を広く集める手段として4月から試行。研究テーマ、目標寄付額などを業務委託先サイト(
https://academist-cf.com/
)で約2カ月公表する間に、目標額に達すれば資金が確保でき、研究が始まる。