尾木直樹さん
18歳から投票できるようになる今夏の参院選。若者の政治参加が進むことが期待されるが、高校生の学外での政治活動を規制する動きもある。新たな有権者に対し、大人はどう向き合うべきなのか。
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1960年代の大学紛争を経て、当時の文部省が69年に高校生の政治活動を禁じる通知を出してから、若者は政治への関心を失いました。日本政府は18歳未満を「子ども」と定義する「子どもの権利条約」を94年に批准しています。18歳以上は成人なのだから、それに合わせて様々な国内法も整えなくてはならないのに、20年以上放置した。遅きに失しました。
今の若者の政治への危機感は強い。安保法制反対のデモなどを見て感じます。政治参加に向けた環境が整いつつある中、残念ながら愛媛の全ての県立高校は、校則で生徒の学外での政治活動を事前届け出制にしました。
また宮城県教委は、報道機関の依頼で学校が特定の生徒に思想信条や政治課題への賛否を問う取材を受けさせるのは「不適切」とする通知を全ての県立高校に出しました。取材に応じるかどうかは生徒の自由であり、過干渉そのものです。上位法である憲法や、子どもの権利条約の精神をどう考えているのか。高校生が社会のあり方を批判的にとらえ、変革する主体としての自覚を持つための機会を奪っています。