今後の政治日程
なぜ、安倍首相は増税延期の長さを2年半の「19年10月まで」としたのか。年明けから円高や株安の局面も続き、アベノミクスの勢いにはかげりもみえるなか、首相周辺は「消費増税を延期するなら2年か2年半だった」と明かす。
ただ、「19年4月まで」とした場合、19年春の統一地方選と増税時期が重なり、直後の19年夏には参院選も控える。選挙への影響を避けるために参院選後まで先送りしたものともみられかねず、与党内からは「みえみえだ」(幹部)との声が聞こえる。
さらに、20年夏には東京五輪があるため、国内の投資や消費が活発になり、景気が上向くことも期待できる。官邸幹部は「19年度後半からオリンピックの特需がどんどん出てくる」とし、2年半後の方が増税しやすいと解説する。
しかし、首相の自民党総裁としての任期は18年9月まで。任期を延長しない限り増税時期が任期を越えてしまうことになり、野党からはさっそく「無責任だ」(民進党の岡田克也代表)との批判が出ている。
年金や介護、子育てといった社会保障への影響も避けられない。軽減税率を考慮しても、消費増税で税収が4兆円超増え、そのうち1・3兆円は社会保障の充実策に使う予定だ。所得が少ないお年寄りや障害者への給付金、介護保険料の軽減、保育所の運営費などに充てることが決まっているが、財務省幹部は「大部分はまた先送りするしかなくなるだろう」と話す。
保育士や介護職員の処遇改善などを盛り込む「ニッポン1億総活躍プラン」はこれとは別の財源が必要だが、増税を延期すれば財源探しはさらに難しくなる。