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岸谷香さん「泣ける自分いた」 プリプリ→子育て→仕事

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岸谷香さん


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歌手の岸谷香さん(49)は、ボーカルを務めていたバンド「プリンセス プリンセス」解散後、10年ほど子育て中心の生活を過ごしました。5月にソロアルバムを出すなど本格的に仕事を再開。働き方や気持ちをどう切り替えてきたのか聞きました。


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投稿:自分のやりたいこと、できてますか?


「プリンセス プリンセス」として1986年にデビューし、女性だけのバンドとして初の日本武道館公演をするなど大活躍した。29歳だった96年に解散、結婚。ソロ活動を始め、34歳で長男、36歳で長女を出産した。「仕事どころじゃなくなっちゃって」。毎日公園に行ったり、金魚の水替えに悪戦苦闘したり。潮干狩りや米作り体験にも出かけた。「とにかく一生懸命でした」。もう仕事に戻らなくてもいいと思っていた。


■3・11で自問


そんな思いは、2011年3月11日を境に変わる。


東日本大震災の激しい揺れが襲ったとき、東京の自宅に息子といたが、小学1年だった娘は下校中で1人で電車に乗っていた。携帯電話が一度だけつながって居場所がわかったが、顔を見るまで「口の中の水分がゼロ」に。たまたま自分は事なきを得たけれど、今までの生活に戻れなかった人がどれだけいるんだろう。私にできることは。


復興支援を目的に、1年間限定の再結成を決めた。「できることがある人は、やらなきゃいけないよね」。子どもも納得してくれた。練習やリハーサルが始まり、子どもは習い事の行き帰りや用意も1人でするようになった。


16年ぶりの再結成となった2012年。仙台でのライブのため4日間、家を空けた。これだけ留守にするのは初めてだ。でも、ママ友や家族たちの助けを借りて何とかなった。大みそかは紅白歌合戦に出場し、「やりきった!」。


息子の中学受験に向けて仕事を抑え、受験生の親モードで過ごした。「去年はよく笑顔だったなあ」。この生活も楽しいけれど。「仕事があったからだ。音楽なしでも大丈夫と思っていたのに、やっぱりキラキラしてたなあ」


■「浦島太郎ってこのことだ」


受験が終わるとすぐ、ソロアルバム作りに動き出す。そこで驚いた。10年以上離れている間に、録音方法など環境が大きく変わっていたのだ。「浦島太郎ってこのことだ、もうさっぱりわかんない」


若いスタッフの意見を聞いてみることにした。初めてのことばかりだが、尻込みしていたら「『時代に取り残されたおばさん』になっちゃう」。今まで大切にしてきた「生バンドで演奏」も、別のやり方を試し、こだわりを手放した。「もう過去の鎧(よろい)ですよ。せっかくだから色々やろうという気持ちが、自分史上最高に出てきた」。


バンドでは「私はギターを弾いて歌うポジションだから」、他の楽器も好きなのにレコーディングで演奏したことはあまりなかった。でも今回ソロになって、ベースをはじめ「やりたい楽器は全部やった」。それによって一緒に演奏するメンバーも替わっていく。パートが決められているバンドではできなかったことだ。今年5月、そのアルバムが発売を迎えた。


仕事再開にあたり、考え方の切り替えもあった。「自分が社会的に座っていたイスがあるわけですよね。そこを空けて家に入る。その同じイスに戻ろうとすると大変だと思います。私は『どのイスでもいいや』という気持ちだったから気楽に復帰できたのかな。だから今状況が違うことも受け入れられる」


■泣ける自分がまだいた


変わらない自分も発見した。去年、ロンドンでミュージカルを見て感動し、娘が心配するほど涙が出た。「若い頃はいっぱい泣いたけど、泣ける自分がまだいたことがうれしくて。好きとか感動とか端っこに置きがちだけれど、もったいない」


これからも、状況に応じて一番やりたいことをしたい。「この年になると失敗も怖くない。もし失敗しても『しょせん自分はこんなもんだ』と思えるって何て楽なんだろうって。昔より思い切れるかもしれません」



「プリンセス プリンセス」として活躍、現在ソロ活動中。10年ぶりのオリジナルアルバム「PIECE of BRIGHT」を発売中(大井田ひろみ)



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