ジョディ・フォスターさん=東京都港区赤坂、郭允撮影
ハリウッドにも「ガラスの天井」がある――。女優として監督として半世紀にわたって一線に立ち続けるジョディ・フォスターさんはそう感じている。女性たちが監督として、男性と同じように活躍できる時代は来るのか。監督作「マネーモンスター」の公開を前に来日した彼女に、映画界の現状と未来への展望を聞いた。
――今度の作品は4本目の監督作ですが、長いキャリアのわりに本数が少ないようですね。
「そうですね。初めて監督をしたのが27歳の時でした。約25年間でたった4作ですからね。2作目を撮った後、子どもが生まれたんです。それで3作目までにずいぶん時間がかかりました。2人の息子を育てながら、女優の仕事もして、さらに映画制作会社も経営していました。だから、監督業に集中できなかったんです」
――子育て中は仕事を控えていたのですか。
「ええ。子どもと一緒にいたかったから、仕事を極力セーブしました。仕事は確かに面白いけれど、私にとっては全てではないんです。3歳で芸能界に入ったのですが、幼い頃に撮影現場で見た男性たちは長時間労働で、子どもの成長を見守れない人が多かった。悲しいことですよね。改善されたとはいえ、今も仕事と家庭の両立が難しい業界ですので、働く人たちへの支援が必要です」
――育児で休んでいる間に、自分の築いてきたポジションに別の人間が座っている。こういう心配はしなかったのですか。
「全然ありませんでした。仕事を奪われる心配より家族との生活を失う方が怖かったです。そのうえ、私は年1作ペースで作品を量産するようなタイプの監督ではありません。すぐに忘れられる映画を5本撮るなら、特別な1本を撮りたいのです。今回の『マネーモンスター』も女性の人物像を深めることにたっぷり時間をかけました。ジュリア・ロバーツが演じる財テク番組のディレクターたちです。生放送中に起きた事件の解決に挑みます。強い女性を登場させるのが好きなのです。男性は壊れやすい生き物だから、助けてあげないとね」
――ハリウッドには女性のスタッフはたくさんいるのですか。
「私の子役時代は、撮影現場に女性がほとんどいませんでした。メイクアップ・アーティストと監督の補佐をする記録係ぐらいです。記録係というのは本当にしっかりした人しか務まらないんです。なぜか、これだけは昔から女性が担っていたんですよ。当時に比べると、今は多くの女性が働いています。ただし、一つだけ女性の数が全く増えていない職種があります。それが監督なのです」