記者会見で社内調査結果について説明する大修館書店の鈴木一行社長(中央)ら=28日、文部科学省
教科書を発行する大修館書店(東京都)が業界ルールに反し、自社の英語教科書を使う高校に教材を無償配布した問題で、大修館は28日、配布先が2013年からの4年間で38都道府県の公私立高校165校、配った教材は計5万7302冊との社内調査結果を発表した。同日、報告書を文部科学省に提出した。
大修館書店、教科書採択高校に無料で問題集提供
同社によると、教材は毎年4月に更新している英語の問題集(1冊290円)。毎年3~4月ごろ、自社の教科書を使っている学校を対象に、更新前のものを配っていたという。
関与したのは営業担当者約40人のうちの20人ほど。社内調査に「(問題集が)処分されるのはもったいない」「あまりがあるから生徒の学習に役立てたい」と考えたと説明し、自社の教科書をまた選ぶよう勧誘する意図は否定した。同社は組織的な行為でなく、「担当者の判断」としている。
文科省によると、高校ではほとんどの教員が担当教科の教科書選びに関わる。そのうえで公立なら学校の希望をもとに教委が、国私立なら各学校が教科書を採択する。教材の配布は教員への直接の便宜といえないが、文科省の担当者は「疑念を招く行為」とみる。
大修館は10日、5都県14高校への無償配布が発覚したと発表。同様の事例がないか調べていた。
文科省は大修館の他の教科も含め、高校教科書を発行する39出版社・個人に対し、金品提供など疑わしい行為がないか7月中旬までに調査するよう求めている。9月にも公表する。
■会見の社長、「採択狙い」を否定
「採択(教科書選び)に結び付いていない」「(教科書を使う学校への)お礼ではない」……。28日に記者会見した大修館書店の鈴木一行社長はそう繰り返し、採択目当ての物品提供という疑いを否定した。