今後の経営方針などについて語るソニーの平井一夫社長=30日、東京都港区、池永牧子撮影
ソニーの平井一夫社長が30日、朝日新聞社のインタビューに応じた。就任5年目を迎え、ようやく資産売却などに頼らずに黒字化できるまでには立て直した。これからどうするのかを聞いた。
――ゲーム部門出身の平井さんが2012年4月に社長に就いた時は、懸案だった家電部門の経験がなかったこともあり、手腕を疑問視する見方もありました。業績を回復できたのはなぜでしょうか。
「いちばん重要なのは、責任者の社長が会社の方向性、ミッションやビジョンを示すことです。ずっと『ソニーはお客様に感動を届けて、好奇心を刺激し、これはすごいね、と言ってもらえる商品、サービス、コンテンツを届ける会社じゃなければいけない』と言い続けました。ただ、私が現場で実際に物事を動かすわけではない。社員が一つの方向に向かってアクションを起こしてくれたことが結果につながっています」
「守っているのは、一度決めた方針をぶれさせないことです。間違いと判断したら、すぐに方向を転換しますが、正しいと思う間は、誰が何と言おうとも最後までやる。テレビ事業が一例です。『赤字なんだからやめた方がいいんじゃないですか』と言われ続けましたが、よい商品を適切なコストでお客様にお届けすれば、必ず黒字化すると思っていました。私の考えがこっちにいったり、あっちにいったりしなければ、それが現場にも伝わって、『じゃあ、がんばってみるか』という気持ちになってもらえる。実際に結果を出してもらいました」
――業績は戻っても、かつてのソニーのように次々とヒット商品を生み出すまでには至っていません。あったはずの活力が失われ、業績が落ち込んだ理由をどう分析しているのでしょうか。
「社長になる前の状況はわからないところもありますが、色々なアイデアやリスクをとる商品が評価される環境をつくらなければならないと考えてきました。そういう環境が以前はなかったのが一つの要因なのかなと思います。成功するしないはもちろん大事ですが、マーケティングの予算を取り、新しい商品を発売までこぎ着けるという思いも私は評価したい。いちばん良くないのは、既存の商品を同じようにつくれば安定して売れるからいいじゃない、という意識です。それではソニーではない。私の求めている文化ではありません」
「時代が移り、海外勢が他社と変わらない商品を安く売っていく傾向が強まった時に、同じ土壌で戦おうとすることはなかなかつらいことです。どうしても価格差は出るので、価格以外の差異化をどこでするかを見極めた上で戦うべきでした。外部環境への対応は必要ですが、ソニーは他社とどこが違い、何が価値なのかという方向で考えるべきだったのかもしれません」