日本人の死亡が確認され、会見をするJICAの北岡伸一理事長=3日午前0時52分、東京都千代田区、北村玲奈撮影
社員ら8人が事件に巻き込まれ、7人が亡くなった国内のコンサルタント会社は突然の悲報に衝撃を受けている。
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「当社が派遣した男性社員ら3人が死亡した。大変悲しく、強い憤りを感じている」
コンサル会社「オリエンタルコンサルタンツグローバル」(東京都渋谷区)の米沢栄二社長は、政府が日本人の死亡を公表したのを受け、3日未明に取材に対応した。
同社によると、3人の遺族に外務省から連絡があったという。亡くなった3人のうち、1人は同社の社員。もう1人は、グループ会社「オリエンタルコンサルタンツ」の社員。もう1人は委託会社の社員という。
グローバル社は、現地の治安を考慮して外出の際は安全のために車をできるだけ使うよう注意喚起してきた。今回の事態を受け、米沢社長は「安全対策を見直さなければいけない。改めて残念です」と述べた。3人はほかのコンサル会社の社員らと、事件の起きたレストランで食事をしていたという。
同社は途上国での開発コンサルタント事業をしており、バングラデシュでは橋の建設管理などに携わっている。今回、事件に巻き込まれたコンサル会社の社員は、国際協力機構(JICA)がバングラデシュ政府と進めている円借款の交通インフラ事業などの調査のため、現地に滞在していたという。
「アルメックVPI」(東京都新宿区)の総務部の担当者は2日夜、「優秀な技術者で会社の宝。発展途上国で精いっぱいやってくれている。とにかく無事でいてほしい」と疲れ切った表情で語っていた。
同社で事件に巻き込まれたのはダッカ出張中の国際事業本部の社員4人。渡辺玉興(たまおき)さんと岡村誠さん、40代と20代の女性2人という。同社によると、渡辺さんについては、外務省から「ケガはしているが、命に別条はない」との連絡があったという。
渡辺さんは6月23日、他の3人は同月10日に日本を発ち、1カ月弱の予定で、ダッカ市内のホテルに宿泊していた。担当者は「治安のいい場所のホテルに宿泊するなど、安全には常に注意していた」と話した。
同じく社員と連絡が取れていない「片平エンジニアリング・インターナショナル」(東京都中央区)は2日夜、「情報を集めている。詳しいことは外務省に聞いてください」と話した。
3日未明、JICAも記者会見を開いた。
「まことに残念、痛恨の極み。膨張する都市交通を状況改善すべく活動していた人たちで、バングラデシュの発展のために貢献していた人を失った。テロリストに怒りを禁じ得ない」。北岡伸一理事長はショックを受けた表情で語った。
JICAによると、事件が起きたのは日本時間の2日未明だった。当初、午前2時半の段階でJICA職員の安全を確認したが、その後、コンサル会社の社員の一部と連絡が取れていないことを把握したという。
2日夜の記者会見で、北岡理事長は「IS(イスラム国)が現れてから2年、ラマダン明けの時期なので注意を呼びかけていた。特にバングラデシュは去年事件があった」、「現場は大使館のそばで高級レストラン。通常考えれば安全なところだった」などと漏らしていた。
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〈国際協力機構(JICA)〉 1974年に国際協力事業団として発足し、海外への技術協力や青年海外協力隊の派遣などに取り組んできた。2008年に国際協力銀行(JBIC)の円借款部門が統合され、現在の組織になった。独立行政法人の一つで職員は約1800人。世界約90カ国で活動している。
海外での主な活動は、①インフラ整備に低利融資する円借款(有償資金協力)②人道支援の無償資金協力③技術協力の途上国援助(ODA)の3分野。
JICA関係者によると、橋や道路の建設のための円借款事業や無償資金協力事業では、日本などのコンサルタント会社が、はじめに相手国政府と契約する。設計図や施工図をつくって提案し、相手国政府が施工業者を選ぶのが一般的な流れだという。