ペルセウス座銀河団。X線天文衛星「ひとみ」は線で囲まれた部分を観測した。画像は米のX線天文衛星「チャンドラ」が撮影したもの(英ケンブリッジ大提供)
打ち上げから2カ月余りで運用断念したX線天文衛星「ひとみ」の観測データによる研究が、7日付英科学誌ネイチャー(電子版)に掲載される。銀河団の中心付近にあるガスの動きが予想の2割程度と小さく、銀河団が高温を保つ原因を再考する必要があるという。研究者は、ひとみの運用が続けば詳しい検証ができたはず、と指摘する。
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ひとみの特徴は天体やガスが出すX線をとらえる能力。宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの国際研究チームは、ひとみの運用中に、地球から約2・5億光年離れたペルセウス座銀河団を観測。中心付近のガスの動きを秒速約150~200キロと解析した。
銀河団には3千万~1億度の高温ガスが存在し、ブラックホールから秒速1千キロ以上の速さで噴き出ているとみられていた。この速さがエネルギーを生み、ガスを高温にすると考えられていたが、別の原因を検討する必要が出てきた。研究チームを率いた首都大学東京の大橋隆哉教授は、「他の要因はまだ分からない。データの詳細な解析を続けたい」とする。
ひとみは運用された2カ月余りで、ほかの星雲なども観測している。研究チームを率いた首都大学東京の大橋隆哉教授は「ひとみが壊れたことは残念。貴重なデータがまだ残っているのでさらに多くの成果につなげたい」と話している。(山崎啓介)