2014年9月の南極上空のオゾンホール。青や紫の部分はオゾン層が薄くなった部分=米航空宇宙局提供
有害な紫外線をさえぎって皮膚がんの増加などから生物を守っているオゾン層が、南極上空で回復の兆候をみせているとの研究結果を、米英の研究チームが米科学誌サイエンスに発表した。国際条約でオゾン層破壊物質を規制したことなどが効果をあげたと推測している。
破壊物質の代表格は、古い冷蔵庫やエアコンの冷媒、スプレーなどに使われた化学物質のフロン。大気中に放出されると上空でオゾン層を壊す。南極上空では、数十年前から穴があいたようにオゾン層が薄くなる「オゾンホール」が出現。1987年にオゾン層保護のための「モントリオール議定書」が採択され、各国でフロンの生産や使用などが規制された。
チームは、2000年から15年間、オゾンホールが拡大する9月に南極で気象観測気球や衛星を使って観測した。その結果、大きさは00年ごろにピークを迎え、その後15年間は変動しながらも小さくなっていることを確認。約450万平方キロメートル縮小したと推測できた。
縮小の傾向は、破壊物質の排出量に基づいてオゾンホールの大きさを予測したシミュレーションの結果とも一致。オゾンホールの大きさは、気温や噴火で放出される化学物質の影響も受けるとされるが、それらの影響を差し引いても、15年間の縮小のうち約350万平方キロメートルは破壊物質の削減によるものと考えられるという。(小坪遊)