2020年12月1日は33回目の「世界エイズデー」。今年は、人類の歴史でこれまでにない新型コロナウイルス感染が拡大する中でエイズデーを迎えるという特別な年となった。科技日報が伝えた。
エイズの主要感染ルートは性感染
中国疾病予防管理センターのエイズ首席専門家である邵一鳴氏は取材に対し、「過去10年で最大の変化は、中国のエイズ感染経路が血液感染から性感染に変わり、抑制が必要なターゲットの数が急激に増えたことだ」と述べた。
特に、男性の同性愛者は一般的に社会がより開放的で寛容な都市に暮らしているため、大都市が男性同性愛者のエイズ感染が最も急増している場所となっている。また、一部の南方の農村地区では、高齢者の異性間感染の問題も見られる。
邵氏は、「これまでエイズ予防・抑制のターゲットは20歳から40歳までの青年・壮年層だったが、現在では年齢層が10代の学生から90代の高齢者まで広がっている。これは新しい状況だ」と指摘。さらに、「性はプライバシーに属する。感染を広げる人がますますインターネットを通じて連絡を取るようになり、その手段もますますつかみにくくなっており、介入の難度が急速に高くなっている。それに加え、基数となる人口が多いため、中国のエイズ新規感染者数、死者数、生存者数は、いずれも世界で上から10位以内となっている」と述べた。
邵氏によると、これまで感染者は主に中原及び西南の辺境地区に集中していた。しかし現在では、毎年大学生の新規エイズ感染者と感染報告者数のうち、男性同性愛者が3分の2以上を占め、しかも若年化する傾向にあるという。邵氏は、「新型コロナ感染症の影響で、オフライン環境下での介入・検査数が昨年より少なくなった。それと同時に、関連データも現在収集中であるため、目下のところは新型コロナ感染症とエイズ感染との関係を判断するのは難しいのが現状だ」と指摘した。
予防が最良の「ワクチン」
多くの専門家が、「新型コロナ感染症における予防を主とする理念は、エイズ対策においても貴重な経験を提供した」としている。
成都中医薬大学管理学院の楊義教授は、「新型コロナ感染拡大期間に、我々は集まりや外出を減らし、外出時にマスクを着用するなどの措置を取り、念には念を入れて防いだと言っていいだろう。エイズ対策でも同様に『防ぐ』ことが必要で、予防が最良の『ワクチン』となる」と指摘する。
同時に、新型コロナ感染症予防・抑制における感染源遡及調査のモデルは、エイズ管理にとっても重要な参考となる。楊教授は、「この経験をエイズ対策に応用できれば、国連合同エイズ計画(UNAIDS)が打ち出したエイズ『90-90-90』目標(感染者の90%以上が診断を受け感染を知ること、診断を受けた感染者の90%以上が治療を受けること、治療中の感染者の90%以上で血中ウイルス量を抑制すること)を2020年までに達成する上でも非常にプラスとなる」と述べている。
このほか、新型コロナ感染症の影響でPCR検査の観念が浸透し、一般市民はすでにPCR検査による感染症診断の方法を受け入れており、疾病予防管理システムは今後エイズのPCR検査による診断を展開する上でもかなり有利となる。楊教授は、「各地で主に新型コロナウイルスに対するPCR検査を行う実験室が大量に建設され、末端レベルのPCR検査能力が大きく増強された。これらの実験室は他のウイルスに対するPCR検査にも応用できる」と指摘。さらに、「注目すべきは、新型コロナ感染症がスマート医療の新時代を切り開き、それがエイズ予防・抑制にとっても大きな影響を及ぼしたという点だ」と述べた。
今年11月3日、教育部(省)が展開を始めた学校教育現場でのエイズ予防行動について、邵氏は、「インターネット情報社会においては、子供の生活はすでに閉じられた環境ではなくなっている。性教育や麻薬・危険ドラッグ使用禁止に関する教育、エイズ感染防止教育は中学・高校の段階から全面的に展開し、子供たちにはっきりと伝えるべきだ。そうでなければ、子供たちはネットや社会から不正確で不健康な情報を得てしまい、成長と発育、性の健康とエイズ予防にとってマイナスになる」と述べた。
多くの専門家は、「性行為を頻繁にしている人、特に複数の性的パートナーと安全でない性行為を頻繁にしている人、男性同士で同性愛性行為をしている人、非正規ルートの輸血を受けた人や血液製剤製造者、共用の針で注射をした人、結核検査で陽性となった人及び性病検査で陽性となった人はいずれもエイズのハイリスク層に属し、早めにエイズウイルスの検査を受けるべきだ」と注意を促している。(編集AK)
「人民網日本語版」2020年12月1日