ベビーシッターとして預かった男児(当時2)を殺害し、その弟にも食事を与えずに低体温症にさせたとして、殺人や保護責任者遺棄致傷などの罪に問われた物袋(もって)勇治被告(28)に対する横浜地裁での裁判員裁判で、検察側は8日、被告に無期懲役を求刑した。「立場を悪用し、多数の子どもにわいせつ行為を繰り返したうえ、他人を装って兄弟を誘拐して1人を殺害した前代未聞の誘拐殺人だ」と訴えた。
弁護側は、殺人など起訴内容の大半について無罪を主張している。判決は20日の予定。
検察側が論告で主張した内容によると、物袋被告は2014年3月、埼玉県内の自宅マンションで、男児の鼻と口をふさいで殺害したとされる。また、12年11月から約1年4カ月の間に男児を含む約10人に対し、下腹部を強くつかむなどの暴行を加えたなどとされ、検察側は「自身の性的欲求のはけ口とするために抵抗できない子どもを繰り返し狙い、再犯可能性は極めて高い」と指摘した。
これまでの公判で物袋被告は、男児は風呂場で一緒に入浴し、目を離した数分の間に溺死(できし)したとして無罪を主張。別の幼児への強制わいせつ致傷などの罪についても、「おむつ替えをする時、自分が中学生だったころに同級生からいじめられたトラウマがフラッシュバックした。いじめられたことと同じことを男児らにすると、気持ちが楽になる」などとわいせつ目的を否認し、無罪だと訴えている。
7日の公判では、被害者参加制度を利用して男児の母親が法廷で意見陳述した。母親は裁判を通じて、「『嫌だ』と思っても伝えられない、泣くことしかできない。そんな子どもたちの恐怖、痛み、苦しみなんておかまいなしに自分のやりたい放題のあなたの残忍さをいやというほど見せつけられた」と話し、「(男児を)返して欲しい。絶対に許せない。自分の犯した罪を命をもって償って欲しい」と訴えた。(古田寛也)