オリックスの塚原。今季は7日現在36試合を投げて、防御率1・85=京セラドーム大阪
■スコアの余白
「お前、オールスターに行くのか。バッピ(打撃投手)?」「いえ、用具係です」。オリックスの試合前練習中、そんな冗談が飛び交った。もしかして、マツダオールスターゲームに選出された全56選手の中で、一番地味かもしれない、知名度からして。
スコアの余白2016
塚原頌平(しょうへい)、24歳。茨城・つくば秀英高から入団した6年目の右腕だ。雰囲気は「ザ・高卒」。マウンドでは肝が据わった投球を見せる一方、練習中は先輩といえども、憎めない笑顔で、遠慮なしに絡んでいく。
高校時代は最速148キロの速球が魅力で、少なくとも10球団からは注目された。公式戦では、多くのスカウトが駆けつけた。
高校3年の夏は、周囲の期待を裏切ってしまう。初戦の一回から炎上し、三回途中で6失点。甲子園の夢ははかなく散った。
2010年秋のドラフト4位でオリックスに入団してからも、試練は続いた。当時の岡田監督に早くから才能を見込まれ、2年目に先発で初勝利を挙げた。だがこの年、右の尺骨などを骨折し手術。今も右の前腕には「これがないと投げられない」という長さ数センチのボルトが2本入っている。
野球人生を振り返ると、本人にとってはこのケガが一番の大ニュース。監督推薦でのオールスター出場が決まっても、「実感はなかったです」。今季は主に、勝ちパターンの七または八回を任されているセットアッパー。初めてのオールスターは、他の一流選手から吸収する場にもなる。(井上翔太)