会社の歓送迎会から残業に戻る途中、交通事故で死亡した男性が労働災害と認められるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(小貫芳信裁判長)は8日、「労災に当たる」との判断を示した。
原告は福岡県苅田町の金属加工会社に勤務していた男性(当時34)の妻。判決によると男性は2010年12月、居酒屋で開かれた中国人研修生の歓送迎会に参加。飲酒はせず、残業に戻る前に研修生を車で住居に送り届ける途中、大型トラックと衝突して死亡した。
男性の妻は労災保険法に基づく遺族補償給付などを申請。国が「死亡は業務と関連しない」として支給しなかったため、処分の取り消しを求めていた。
第二小法廷は、男性が一度は断ったが上司に促されて歓送迎会に参加したことや、会費が会社の経費で支払われたこと、送迎には社有車が使われたことなどから、会が「事業活動に密接に関連していた」と認定。「男性は会に参加しないわけにはいかない状況に置かれ、事故の際も会社の支配下にあった」と判断した。
一審・東京地裁は「参加は本人の意思」などとして妻の訴えを退け、二審・東京高裁も支持していた。(市川美亜子)