落語で特殊詐欺の被害防止を呼びかける三重県警大台署警務課の倉嶋貴経巡査部長=大台町栃原のグリーンプラザおおだい
三重県警の大台署警務課の倉嶋貴経(たかつね)巡査部長(37)は、落語で特殊詐欺の被害防止に取り組んでいる。福島第一原発がある福島県大熊町出身で、東日本大震災の後、岩手に出向して仮設住宅の住民を相手に腕を磨いた。自身の経験から、落語を通じて「まさか自分が」と思うことが誰にでも起こりうると感じて欲しいという。
「家にオレオレ詐欺の電話がかかってきたことがある方いますか」。倉嶋巡査部長が問いかけると、ちらほら手が上がった。「それでは、オレオレ詐欺の電話をかけたことがあるという方」と続けると、客席から笑いが起こる。「もしいらっしゃったら、大台署の留置所、いつでも空いておりますので」
4月中旬、大台町の高齢者を前に約30分間、落語で特殊詐欺の被害防止を呼びかけた。聞いていた女性(84)は「ユーモアがあって頭にすっと入ってくる」と話す。
倉嶋巡査部長は毎回、最後に自分の体験を話す。「福島県大熊町出身で、震災後、岩手県宮古市というところにおりました。被災された方と話すと、『まさかこんなことになるなんて』とおっしゃいます」
そして、こう締めくくる。「事件、事故、災害というものがひとごとのように思えるかも知れません。けど、『まさか自分は大丈夫だろう』と思うことは起こりうるんです」
原発から約3キロの場所で生ま…