「返済は順調ですか」。田中敦子さん(中央)の取材に率直に答える橋沼幸造社長(左)=宮城県塩釜市
東日本大震災で被災した中小企業の復興を、映像で記録し続ける女性がいる。映像プロデューサーの田中敦子さん(74)。宮城県と岩手県の沿岸部にある水産加工業の5社を、震災直後からカメラで追う。「本当の復興はこれから」。震災から10年は続けていきたいという。
6月中旬。かまぼこ製造業「カネコ橋沼商店」(宮城県塩釜市)の橋沼幸造社長(62)は、短い昼休みに時間を作って田中さんの取材を受けていた。
塩釜湾に面した工場は津波の直撃を受けて壊滅状態に。再建資金の調達交渉、人件費などの高騰、工期の遅れ……。次々に襲う困難に立ち向かう姿を田中さんは追い続けた。12年に工場は再開。残り3億円弱の融資は少しずつ返済している。「地道に返していくしかない。あと15年は頑張らなくちゃ」とカメラを前に語る社長。融資の返済状況も率直に答えるのは、「今でも取材に来るのはこの人だけだもの。しかも自費でね」。
田中さんはかつて、「ウルトラ…