対談に臨む作家の村田沙耶香さん(左)と窪美澄さん=早坂元興撮影
結婚やセックスをする人は少数派で、子を産むと社会保障を受けられるが、生まれた子は国や社会のもの――。日本の未来予想図を想起させるような小説が、話題を呼んでいる。『アカガミ』と『消滅世界』をそれぞれ著した作家の窪美澄(くぼみすみ)さん(50)と村田沙耶香(さやか)さん(36)が語りあった。
《作品のあらすじ》
■窪美澄『アカガミ』(河出書房新社)
2020年を境に若者たちは自殺へ駆り立てられ、性や恋愛への関心を失っていた。主人公の女性は、男女を「番(つが)い」にして「まぐわい(セックス)」により子どもをもうけさせる国の制度「アカガミ」に志願する。
■村田沙耶香『消滅世界』(同)
生殖は人工授精のみで行われ、夫婦間のセックスは近親相姦(そうかん)とされる世界。主人公の女性は「交尾(セックス)」で生まれ、自らもセックスをする珍しい存在だ。男性も人工子宮をつけ、抽選で当たった人が順番に人工授精をする実験都市に移住する。
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窪美澄さんと村田沙耶香さんの対談の詳報は、以下の通り。
窪 作品を書いた一昨年から昨年にかけて、少子化やセックスが「国」の問題として絡め取られていきそうな予感がありました。きな臭い安保法制のニュースがあり、日本が外圧に対して内部の力を高めようとしている雰囲気を感じました。戦前の「産めよ殖やせよ」の世界に先祖返りするのではないかという気持ち悪さがあります。
私自身、息子を国のために産んだという気持ちは全然ない。政治家や学校の先生などえらい人が「少子化のためにこうすべきだ」と言うのを聞くと、生殖という生のところを、硬い物でえぐられるような嫌な気持ちになります。
村田 性というものは、目覚めの時から私の体の中にずっと大切なものとしてあったので、自分のものであり続けて欲しいと思います。私にとってとても切実な願いです。
窪 村田さんの作品からは、自分の体に対するいとおしさが伝わってきます。村田さんが表現していることが、踏みにじられないといいなと思います。
――作品では、国が作った制度に参加して子どもをもうける人は、社会保障や周囲からの世話を受けられます。少子化を止めるため、産んだ人の社会保障をより手厚くするべきだという議論は現実にもあります。
村田 子どものいる友達が、も…