2015年クルーズ船の主な寄港地と回数
政府は2日に閣議決定した経済対策の柱の一つに、外国クルーズ船の誘致を掲げた。旗を振る自民党の二階俊博・新幹事長らには、外国人観光客の経済効果を地方に広げ、観光振興名目で港湾整備などを進める思惑がある。自民内では予算アップの期待も高まるが、観光業界からはソフト面の対策を求める声がある。
先月27日、福岡市。安倍政権の看板政策をアピールする「1億総活躍・地方創生全国大会」で、安倍晋三首相は新たな経済対策の規模について「事業規模で総額28兆円を上回る」と表明した。具体策に外国からのクルーズ船(大型客船)の誘致を打ち出し、「クルーズ船を受け入れる港が必要だ。港の浚渫(しゅんせつ)、客船ターミナルの整備。観光立国実現のための21世紀型のインフラです」と強調した。
政府は経済対策で、「21世紀型インフラ整備」を1億総活躍社会の実現などと並ぶ「4本柱」の一つに位置づける。2020年の訪日外国人旅行客を4千万人に倍増させ、うちクルーズ船の旅行客を500万人にする目標も掲げる。国土交通省によると、クルーズ船の寄港は近年、博多や横浜など大都市だけでなく、長崎や那覇など地方でも急増している。大型船が寄港できる岸壁が限られる博多や那覇では、入港を断ったケースもあったという。
3日の自民党役員人事で幹事長に就く二階総務会長らは昨夏に「クルーズ船観光振興議員連盟」を立ち上げ、大型船が入港できる港湾整備などを提言。関連事業の予算化を陳情する自治体の動きも活発だ。
政府は昨年度補正予算に30億円を計上し、博多や長崎など9港で岸壁の拡充工事などを実施。今年度も港湾整備費2317億円の一部をクルーズ船誘致に向けた事業に充てる。同議連の議員は「より大型の船の入港ができるよう16年度補正予算でも事業費確保をめざす」と語る。