力投する履正社の寺島=林紗記撮影
(8日、高校野球 履正社5―1高川学園)
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ようやくたどり着いた灼熱(しゃくねつ)のマウンドで、履正社の寺島は笑っていた。「すごく新鮮で楽しかった。どの球場よりも熱気がすごかった」
投球の大半が直球だ。一回に高川学園の2番山崎から奪った見逃し三振は、この日最速の146キロ。五回まで、一本の安打も許さない。「伸びがあって攻略できない。8割が直球と分かっていても、コースが良くて手が出なかった」。山崎をそう嘆かせた。
その名は早くから知られていた。中学時代はボーイズリーグ日本代表のエース。関西だけでなく、関東の強豪校も左腕の入学を熱望した。履正社でも1年夏からマウンドに立った。
が、甲子園は遠い。立ちはだかったのは大阪桐蔭。昨夏は大阪大会2回戦で打ち砕かれた。
「お前の武器は何だ」。選抜出場が絶望的になった昨秋、岡田監督から言われた。知らず知らず、フォークやスライダーに頼っていた自分に気づかされた。
目指したのは、分かっていても打たれない直球。指先を鍛え、下半身にためた力を余すことなく白球に伝える術を手に入れた。
まだ、全力ではない。「8割の力で、バランス良く」。余計な力みがないから、九回に再び146キロを出す余力がある。被安打2で11奪三振。汗を光らせながら宣言した。
「せっかくなんで優勝したい。僕が全試合行くつもり」。敗戦を糧に大きくなった「世代最強左腕」は、まだ勝ち足りていない。(山口史朗)
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○安田(履) 先頭の三回は右翼線二塁打、七回2死二塁は中越えに適時二塁打。2年生4番は、「『やってやるぞ』といい緊張感で入れました」。