女子52キロ級の表彰式を終え、報道陣に銅メダルを見せる中村美里=7日、カリオカアリーナ、竹花徹朗撮影
隣の人の会話が聞こえないほどの声援が会場を包む。柔道女子52キロ級、中村美里(27)の3位決定戦の相手は、地元ブラジル選手。逆境をはねのけ、中村が延長の末に制すると、静まる観客席で、父一夫さん(53)は大きく息をはき、目頭を押さえた。
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女子52キロ中村・男子66キロ海老沼が銅 柔道
柔道の日程・記録
2008年の北京五輪で銅メダルを獲得したが、12年ロンドン五輪は初戦敗退。同年秋、それまで酷使してきたひざを手術した。競技のためではなく日常生活のため、と聞いた一夫さんは「柔道をやめるのかな」と思った。
続けられるのか――。中村自身も悩んだ。だが、術後のリハビリ中、遠征を自費でまかなう他競技の選手に出会い、自分のいた場所が恵まれていることを知った。
試合に復帰したリハビリ仲間から「試合を見に来て」と誘われ、「次は美里の番だよ」と励まされた。「『ううん』って否定できなかった。私も試合がしたくなった」。母美智代さん(50)に打ち明けた。復帰後の大会で優勝。3度目の五輪につなげた。
一夫さんは「色んな人に出会い、自分を見つめ直す時間になった。柔道も落ち着いた」。娘には厳しく「試合に勝っても笑うな」と命じてきた。銅メダルでも、ほとんど表情を崩さなかった中村。逆に、父の目には涙がこみ上げた。「悔しいけど、メダルが取れてうれしくて」。最後は泣き笑いになった。
地元、東京都八王子市では、祖…