3000と表示された「イチメーター」を掲げるエイミー・フランツさん=杉本康弘撮影
米国で「国民的な娯楽」と呼ばれる大リーグで、通算3千安打は過去29人しか成し遂げていない偉大な記録だ。7日、マーリンズのイチロー(42)が30人目の達成者に。歴史的な瞬間に立ち会ったファンは、特別な気持ちで偉業を祝った。
3000安打、16年の旅路 イチローの言葉でたどる
イチロー、大リーグ3千安打達成 史上30人目
「3000」。七回、イチローが放った3千安打目を、三塁側内野席から見つめたエイミー・フランツさんは、通算安打数を示すボード「イチメーター」を両手で掲げて喜んだ。残り10安打だった7月15日からチームに同行し、各地でボードを掲げてカウントダウンをしてきた。セントルイス、フィラデルフィア、マイアミ、シカゴ、デンバーを旅してきたお金は、インターネットを通じて賛同者から資金を募り、約100万円を集めた。
マーリンズの本拠マイアミから北西に約4400キロ、西海岸のシアトルに住む主婦だ。かつてイチローがプレーしたマリナーズ本拠セーフコフィールドの右翼席最前列に年間指定席を持つ野球ファン。イチローが大リーグ年間最多262安打を放った2004年、記録達成を盛り上げるため、シーズン途中に作ったのが「イチメーター」。以来、年間安打数だけでなく、大リーグ通算の本数を数えるようになった。
イチローがヤンキースへ移籍した際には、長年の応援のお礼として、イチローからサイン入りバットとスパイクに手紙がそえられて届けられたことがあった。球場でイチローと交流する数少ないファンでもある。移籍後も、シアトルに遠征に来たときは、右翼席で安打数を示すボードを掲げて応援する。「野球に対する彼の情熱と、取り組む姿勢に心をひかれた。歴史的瞬間をどうしても目撃したかった」
マーリンズの担当記者で、マイアミ・ヘラルド紙のクラーク・スペンサーさんは「3千安打は、めったにお目にかかれない、とてつもないごちそうのような出来事」。残り10本に迫った球宴前から、地元のラジオ番組に出演するたびに、イチローと3千安打についてばかり話を求められたと笑う。この偉業達成で、日本選手初の米野球殿堂入りを「10億%確かだ」と太鼓判を押した。
大リーグのロブ・マンフレッド・コミッショナーは、27歳からの3千安打を「特別」と表現し、「最高の打者の一人になった。前代未聞の快挙といっていいかもしれない」と語った。(遠田寛生)