（１１日、高校野球 富山第一１―０中越）

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打球を見送る中越の左腕、今村の顔は上を向いていた。九回１死二塁。この日の１１５球目を左中間に運ばれた。サヨナラの走者が本塁を駆け抜ける。整列すると、涙があふれた。

直前、右中間二塁打を浴びるまで無安打投球を続けていた。伝令が来て、「四球で満塁にしてもいいから、厳しいコースを突こう」と言われていた。だが続く打者に３ボールから一つストライクが入り、欲が出た。「もう１球、打ってこないかな」。外角いっぱいに要求された直球が、真ん中高めへ吸い込まれた。

今村に変化が起きたのは七回だ。スコアボードを見て、無安打に気づいた。球が浮き、２四球。自らを襲うライナーを好捕して切り抜けた八回も、２四球などで満塁にされた。「無安打を意識しないように。自分の投球を」。そう考えるほど制球は乱れていった。

本田監督は、四球を、継投の判断材料にしていた。新潟大会は６試合のうち４試合が継投。だが、「このような投球をしていたら……」。今村も、「中盤までに１本打たれていたら、自分の後ろにも投手がいると思えたかもしれない」。

元々、１３０キロ台後半の直球が武器だった。新潟大会前にひじを痛め、大半が１２０キロ台に。そのぶん磨きをかけたスライダーは、大舞台でさえわたった。ゴロの山を築き、終盤は、その１球、１球が球場を釘付けにした。「声援が力になりました」と今村。拍手の鳴りやまないスタンドに頭を下げた。（鈴木健輔）

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●西山（中） 一回の好機で三振。「１点取れば展開は違ったはず。４番として結果を出したかった。今村が粘り強く投げてくれたのに申し訳ない」