試合終了後、ベンチ前に整列する履正社の選手たち=阪神甲子園球場、高橋雄大撮影
(16日、高校野球 常総学院7―4履正社)
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優勝候補と注目された履正社(大阪)が3回戦で姿を消した。身体能力の高い個性派集団だが、これまで甲子園は遠かった。「つなぐ」意識を持って臨んだ今夏。16日の大会第10日第4試合で常総学院(茨城)に4―7で敗れ、目標の全国制覇はならなかったが、選手は確かな成長をみせた。
「つなげ!」「笑顔で行こう」。九回裏の攻撃。ベンチで選手が総立ちになり叫んだ。2死三塁の好機。打席には5番打者の井町大生(だい)君(3年)。「次につなげる」。打球は中前への適時打となり、3点差に迫った。「みんなの気持ちで打ったヒットでした」
中学時代から注目された振りの鋭い打者ぞろい。だが、みんなが好きなように打って抑えられていた。昨秋は府大会3位決定戦で敗退。それまで本音で話し合うことはなかった。「このままでは甲子園にいけない」。昼休みや放課後にミーティングを開き、通信アプリLINE(ライン)で議論した。
「2ストライクから簡単に終わっている。しぶとさが必要」「打席で投手に球数を多く投げさせよう」
LINEのやりとりは日付が変わることもあった。
淡泊な試合運びをしていたチームは試合中も「勝つために何をすべきか」と選手同士で話し合うように。打線が「点」から「線」になった。今春の府大会と近畿大会、夏の大阪大会と公式戦を無敗で駆け抜けた。
迎えた夏の甲子園。14日の横浜との2回戦で、初回に連続三振を喫した3人が相手投手の特徴をベンチで後続の打者に伝えた。二回に逆転の3点本塁打を放った山本侑度(ゆうと)君(3年)は「みんなのアドバイスのおかげで打てた」と言う。
この日の常総学院戦でも相手投手の特徴を選手同士で共有した。立ち上がりから5点のリードを奪われたが、こつこつと1点ずつ得点を重ねた。最後は相手を上回る13安打。「みんなでつなぐ履正社らしい野球ができた」と山本君。敗れはしたが、夏の甲子園で初となる2勝を成し遂げた。
山本君は「秋は自分のことしか考えていなかった。今は一つになれた。チームでプレーできた」。試合終了後、泣きはらした顔で井町君は言った。「秋までバラバラだったけど、うれしいことも厳しいこともみんなで味わってきた。悔しいけど最高の仲間と甲子園で野球ができてよかった」
岡田龍生(たつお)監督(55)は「個人主義から、つなぐという感覚に変わったからこそ、ここまで勝てるチームになった」と話した。
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●岡田監督(履) 二回途中で寺島を投入。「交代が遅れれば試合が決してしまうと思った。よう最後まで投げてくれた。打線は気負いがあった」
●山口(履) 2回途中で降板。「今日は自分一人で投げるつもりだった」。甘い球を見逃してくれずに4失点。「常総は強かった」と涙。