長崎県新上五島町で2014年1月、中学3年の男子生徒が自殺した問題で、両親が31日、教職員らがいじめに対応しなかったために自殺に至ったとして、町と県を相手取り、計約6250万円の損害賠償を求めて長崎地裁に提訴した。
町立中学の3年生だった松竹景虎さん(当時15)は3学期の始業式の日、「LINE(ライン)」に自殺を示唆する書き込みをした後、自宅近くの町営グラウンドで首をつった。
訴状によると、松竹さんは3年生になった頃から同級生らに悪口を言われるなどし、6月ごろから状況が悪化。夏休みに書いた作文には「いじめの原因は空気」「目に見えないものだから恐ろしい」などと記していた。さらに担任が他の生徒から「景虎が悪口を言われて困っている」などと相談を受けていたことなどから、教職員らはいじめを把握する機会があったのに対応しなかったと主張している。
町が設けた第三者委員会は今年1月、過酷ないじめが原因で自殺したと認定する報告書を町に提出。学校のいじめ予防対策が「非常に不十分だった」と指摘した。町は再発防止策を打ち出したが、遺族は十分な検証がされていないとして、提訴に踏み切った。両親は「裁判を通じ、学校関係者に息子の死に向き合ってもらい、検証につなげたい」と話した。
新上五島町の担当者は「裁判の中できちんと対応していきたい。弁護士、関係機関と話しながら進めていく」と話した。(田部愛)