東京電力の公募増資に関する情報を野村証券社員から事前に得てインサイダー取引をしたとして、金融庁から課徴金納付命令を受けた会社役員の女性が、処分の取り消しを国に求めた訴訟の判決で、東京地裁(林俊之裁判長)は1日、女性の訴えを認めて処分を取り消した。金融庁によると、金融商品取引法に基づく同庁の課徴金納付命令が裁判で取り消されたのは初めて。
判決によると、女性は2010年に野村証券社員から内部情報を聞いて東電株を売ったとして、13年に金融庁から6万円の課徴金納付命令を受けた。女性は「インサイダー情報は聞いていない」と主張。判決は、野村証券社員が東電の公募増資のうわさに接した可能性があったとしつつ、「証拠上、公募増資の決定や公表日を事前に知ったとは認められない」と判断し、インサイダー取引には当たらないと結論づけた。
金融庁は「国の主張が認められなかったことは遺憾。判決内容を十分に精査し、対応を検討する」とするコメントを出した。
野村証券は12年、この件などで情報を漏らしたとして社員を懲戒解雇したが、東京地裁は今年2月、「インサイダー情報を漏らしたとは言えない」として解雇無効の判決を言い渡した。野村証券側は控訴している。