今季初戦の明大戦で試合残り1分39秒で逆転タッチダウンを決めた慶大主将のRB李卓
秋だ。全国各地でアメリカンフットボールのシーズンが始まっている。大学フットボール界を代表する2人の走り屋は、初戦からそれぞれに輝いた。
まずは昨季の年間最優秀選手(ミルズ杯)に輝いた立命大のRB西村七斗(ななと、3年、大阪産大付)。8月26日の関西学生リーグ開幕戦。甲南大相手に、今季のチームの攻撃第1プレーでタッチダウン(TD)してみせた。
自陣46ヤードからの攻撃。QBからボールを託されると、待ち受けるタックラーを右へのステップでかわす。そして加速して縦へ。右へ大きくコースを変えると、最後は3人のうち左の2人の間へ突っ込んだ。残り5ヤードは2人のタックルを引きずるようにして、エンドゾーンに倒れ込んだ。
「シーズンの最初なんで、気合入れてました。向こうが警戒してても、走って当たり前です」。新チームでRBのポジションリーダーになっただけに、発言も頼もしい。この日は前半だけの出場ながら計113ヤードを走って2TDだった。
そして9月4日は慶応大の主将RB李卓(り・たく、4年、愛知・南山)。春からエースの李に頼らない戦いを目指してきた慶大。この日も第3クオーター(Q)まで、ボールを持ったのは5回だけだった。
しかし第4Qに入ってすぐ明大に14―17と逆転されると、エースに託した。試合残り4分14秒、自陣34ヤードからの攻撃。李、李、李で敵陣20ヤードまできた。さらに4回続けてボールを持ち、試合残り1分39秒で逆転TD。逃げ切った。1人ですべてをひっくり返す、まさに大黒柱の働きだった。李は「キャプテンでありエースだから、僕が走ってチームを勝たせる。その気持ちがないと始まらない。最後は『やってやるんだ』という気持ちでいきました」。
李は南山高3年の春、関西大会2回戦で西村の大阪産大付高と対戦。43―56で敗れたが、優勝した大阪産大付を相手に、そのスピードとセンスで走りまくった。そこから2人は意識する間柄になり、今年6月の世界大学選手権で日本代表のチームメートに。お互いのプレーを間近で見て、口々に「すごい刺激になりました」と言った。
とくに李は、西村について質問されると、興奮気味に語った。「彼を見てると、ほんとに欠点がないんです。こんなすごい選手と甲子園ボウルで走り合いたいと思った。なんだか、アツくなりました」
李は身長182センチ、体重88キロ。西村は174センチ、80キロ。ともにトレーニングで鍛え上げ、速くて当たれるRBだ。12月の甲子園で、彼らの対決は実現するだろうか。(篠原大輔)