パリ郊外でモネ(左)と談笑する松方幸次郎
実業家で、美術コレクターとしても著名な松方幸次郎(1865~1950)が戦前にヨーロッパで収集した美術品のうち、ロンドンで焼失した作品のリストが見つかった。国立西洋美術館(東京)が発表した。リストには絵画など953点が記載され、約1万点といわれる「松方コレクション」の全容解明に向けた手がかりになるという。
同館が2月、ロンドンのテート美術館付属施設に保管されていた文書を確認した。リストはA4判のタイプ打ち原稿15枚で、作家、主題、評価額が記載されていた。作品の内訳は絵画255点、版画554点、彫刻17点などだった。評価額の高い作品には、マネの「闘牛士」、ゴッホの「花瓶の花」もあった。収集の指南役だった英国の画家フランク・ブラングィンの作品が最も多く、約450点にのぼった。
「松方コレクション」は、戦前から戦中にかけて、日英仏で分散して保管された。仏保管分のうち約370点は戦後、仏政府から寄贈・返還され、国立西洋美術館の礎となった。日本保管分のうち、浮世絵約8千点は現在、東京国立博物館が収蔵している。だが、ロンドンの倉庫で保管されていた作品は1939年に火災で焼失。点数には諸説があり、内訳も不明だった。
国立西洋美術館の馬渕明子館長は「フランスでの収集活動だけでなく、松方がイギリス美術の動向にもよく目を配っていたことがわかる」と話した。(西岡一正、丸山ひかり)