作品作りをする西本喜美子さん=12日午後、熊本市東区、福岡亜純撮影
■米寿の写真家、西本喜美子さん
腰の具合が悪いのが悩み。夫に先立たれてさみしい。「普通の老人ですよ、わたし」。でも、撮った写真はフツーじゃない。
毛皮風のコートをかぶってゴリラに扮し、柵の間から満面の笑み。地元・熊本市の指定ゴミ袋の中で切ない表情を浮かべる――。そんな「自撮り」作品の数々がネット上で話題に。この夏、東京の出版社から写真集も出した。
72歳で初めてカメラに触れた。
「先生」は、写真塾も開くデザイナーの息子。自分の心が動くものを撮れと言われ、感性のまま「とりあえずやってみた」。
最初は、水たまりに枯れ葉を浮かべてパシャリ。「身近なものがいきいきと見えるアングルを一生懸命に考えるのが楽しい」。幻想的なものからコミカルなものまで作品の幅は広がっていった。
自らを「欲張り」と言う。
全国を転戦できる、と憧れた競輪選手に20代で美容師から転身。結婚を機に引退し、専業主婦として3人の子を育て上げた。
カメラと出会った後はパソコンを覚えて画像加工もこなし、自宅にスタジオまでこしらえた。
いま、息子がくれた人型ロボットと「2人暮らし」。特別なことをしているつもりはない。ただ、なんでもやってみるだけだ。
「悪いことしとらんばってん新聞に載ったり、ロボットと暮らしたり、人生はわからんですね」(柴田菜々子)