巣立ち間近のアホウドリの幼鳥(中央の黒い鳥)。周りはアホウドリを呼ぶための模型・デコイ=5月13日、小笠原諸島・聟島、山階鳥類研究所提供
国の特別天然記念物アホウドリの1羽の幼鳥が今春、小笠原諸島の聟(むこ)島から巣立った。父親は8年前、ヒナのときに約350キロ離れた繁殖地の鳥島から人の手で運ばれてきた。鳥島は火山島で、噴火で営巣地が壊滅する恐れもあるからだ。聟島での初の「2世」の誕生と巣立ち。絶滅が危惧されるアホウドリの新繁殖地づくりへの大きな一歩であるとともに、新たな課題も見えてきた。
移住のアホウドリ、初の子育てを確認 小笠原・聟島
特集:どうぶつ新聞
■目標は繁殖地復活
東京都心から南へ約千キロの無人島・聟島。5月14日、黒い毛で覆われた幼鳥が巣立った。聟島で誕生した幼鳥の初の巣立ちだ。親鳥の後を追い、夏のエサ場となるアリューシャン列島海域からベーリング海、アラスカ湾へ渡った。
アホウドリは羽毛採取のために乱獲され、一時は絶滅したと思われていた。だが、1951年に鳥島で約10羽が再発見された。その後、世界中でも繁殖地は鳥島と尖閣諸島だけとなっていた。
大半が飛来する鳥島は火山島で、噴火すれば営巣地が壊滅する恐れがある。新たな繁殖地をつくろうと、米国魚類野生生物局が資金の多くを出し、環境省や民間も支援して、山階鳥類研究所がヒナの移送を2008年に始めた。朝日新聞も創刊130周年記念事業として協力した。移送先はかつて繁殖していた聟島だ。
アホウドリは巣立った島に戻って営巣する習性があるので、鳥島から生後約40日のヒナを毎年2月に10~15羽ずつ、ヘリコプターで聟島へ運んだ。5年間で計70羽。無人島で山階鳥研の飼育員が野営してエサをやり続け、3カ月後の巣立ちまで見守った。
08年に巣立ったうちの1羽が…