立命館大学・唐鎌直義教授
■「にっぽんの負担」インタビュー編
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貧困を背景に、お金がなくて必要な医療が受けられない――。こうした「受診抑制」を防ぐにはどうすればいいのか。立命館大学の唐鎌直義教授(社会保障論)に聞きました。
――民間シンクタンク「日本医療政策機構」の2008年の調査では、所得が低い層の約4割が、1年間にお金が理由で医療を受けなかった経験がありました。この現状をどうみますか。
「日本の社会保障の仕組みには大きな欠陥がある。社会保障とは、貧困に転落させない『防貧』と、貧しい人の生存権を守る『救貧』の二つで成り立っている。健康保険や年金などの社会保険が防貧の役割を、生活保護が救貧の役割を担っているが、両方とも十分に機能していない」
――具体的に教えて下さい。
「防貧がうまくいっていない例が、年金だ。国民年金は40年間保険料を納め続けても、最高で月6万5千円ほどしか支給されない。年金の給付水準を抑える『マクロ経済スライド』は、さらに強化されようとしている。生活保護基準以下の年金では、多くの高齢者が暮らせない」
「『国民皆保険』も崩れている。誰もが保険証を持ち、お金の心配なく、安心して医療機関にいける制度だったはずだ。だが、低年金の高齢者や失業した人、非正規で働く人らは国民健康保険(国保)の保険料の負担にあえいでいる。国保を運営する自治体は、税金の投入を避けるために保険料を引き上げる傾向にある。2割近い国保世帯が保険料を滞納している。保険料を払うのに精いっぱいで、受診した時に払う3割の窓口負担が支払えない人も多い。病気になっても受診できず、症状が悪化してしまう」
――貧しい人々へのセーフティ…